デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLykke Midtboll Ornbjerg氏

 TNF阻害薬による治療は、関節リウマチ(RA)の症状や炎症を改善するだけでなく、関節破壊の進行も抑制することが複数の無作為化比較試験(RCT)によって示されている。しかし、TNF阻害薬の関節破壊進行抑制効果を実地臨床の場で認めたとする報告は少ない。デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLykke Midtboll Ornbjerg氏らは、同国の大規模患者レジストリー・DANBIOの登録患者のX線データを解析し、TNF阻害薬治療を受けた患者の7割は、2年間で全く関節破壊の進行が認められなかったことを、6月16日から19日にローマで開催された欧州リウマチ学会で報告した。

 DANBIOは2000年に開始されたデンマークにおける全国規模の患者レジストリーであり、同国でのTNF阻害薬治療中のRA患者の90%以上を網羅する。Ornbjerg氏らは、そのデータベースから、2007年7月1日以前にTNF阻害薬治療を開始した患者を抽出し、(A)TNF阻害薬治療の開始2年前、(B)同開始時、(C)同開始2年後、の3時点における手、手首、前腕のX線像からTotal Sharp Score(TSS)を算出し、TNF阻害薬導入前(A-B期間)と導入後(B-C期間)における関節破壊の年間進行度をそれぞれ求めた。

 上記3カ所×3時点のX線像を入手できた患者は522例だった。76%は女性で、80%がリウマトイド因子陽性、65%が抗CCP抗体陽性、年齢は21〜86歳(中央値54歳)、罹病期間は0〜67年(中央値5年)であった。また、TNF阻害薬導入前の治療内容は、メトトレキサート(MTX)45%、スルファサラジン22%、ヒドロキシクロロキン12%、他のDMARDs 11%、未治療10%だった。

 解析の結果、A-B期間におけるTSSは、平均21.0から25.7へと増加し、関節破壊の年間進行度は2.1ポイントであった。これに対し、B-C期間におけるTSSは、平均25.7から27.0への増加にとどまり、関節破壊の年間進行度は0.67ポイントだった(p<0.0001 vs A-B期間)。B-C期間ではA-B期間に比べて関節破壊の進行が約61%抑制されていたことになる。

 また、関節破壊の年間進行度の中央値は、A-B期間の0.73ポイントに対し、B-C期間では0.0ポイントだった(p<0.0001)。すなわち、半数以上の患者では全く関節破壊が進行していなかった。関節破壊の進行を認めた患者の割合は、A−B期間では59%、B-C期間では31%であった(p<0.0001)。

 以上のように、RA患者の関節破壊の進行は、TNF阻害薬治療を開始することで、それまでの治療に比べて約61%も抑制され、約7割の患者では関節破壊の進行を完全に抑制できる可能性が示された。厳格に管理されたRCTと同様の結果が実臨床下でも確認されたことの意義は大きいといえよう。

(日経メディカル別冊編集)