ノルウェー・Diakonhjemmet病院のElisabeth Lie氏

 関節リウマチ(RA)の治療においては、メトトレキサート(MTX)による治療で効果不十分の場合、MTXに他の抗リウマチ薬(DMARDs)を追加するよりも、MTXとTNF阻害薬を併用した方が、より高い有効性が得られると考えられている。TNF阻害薬を併用する前にDMARDsの追加を試みる戦略が取られることも少なくないが、そうした段階的治療は患者に不要な苦痛を強いるだけかもしれない。大規模観察研究NOR-DMARDのデータに基づき、TNF阻害薬治療開始までの薬物治療歴とRAの転帰の関係を検討したノルウェーの研究で、MTX単剤で効果不十分だった場合、直後にTNF阻害薬を併用した患者群に比べ、他のDMARDとMTXの併用が選択された患者群では転帰が不良であったことを報告した。6月16日から19日にローマで開催された欧州リウマチ学会(EULAR 2010)で、ノルウェー・Diakonhjemmet病院のElisabeth Lie氏らが報告した。

 NOR-DMARDは、ノルウェーの5つのリウマチ診療施設によって2000年12月に開始された大規模観察研究であり、当該病院において生物学的製剤を含むリウマチ治療薬を処方された18歳以上の患者がすべて登録されている。

 Lie氏らは、このデータベースに登録されたRA罹病期間5年未満の患者の中から、MTX単剤が効果不十分だった場合、その直後からTNF阻害薬が併用された患者(グループI)と、他のDMARDsが併用された患者(グループII)、グループIIのうち、後にMTX+TNF阻害薬への切り替えがなされたサブグループ(グループIII)のデータを抽出し、各群の経過を2009年7月まで追跡した。

 主要評価項目は6カ月後の臨床的寛解(DAS28<2.6)率、副次的評価項目はベースライン時(IFXまたは他のDMARDによる併用療法が開始された時点)と3カ月後、6カ月後のDAS28と臨床的寛解率、著効(EULAR改善基準によるgood response)率の変化とした。また、それぞれの処方に対する1年後、2年後の継続率がKaplan-Meier法にて解析した。

 各グループの例数は、グループIが85例、グループIIが125例、グループIIIが31例であった。グループIとグループIIのベースライン時の背景因子およびRAの状態に有意な差は認められなかった。グループIIIではグループIに比して罹病期間が有意に長く(1.82年 vs 1.25年、p=0.006)、CDAI(Clinical Disease Activity Index)が若干不良である傾向(30.9 vs 24.5、p=0.06)がみられたが、他の背景因子やRAの状態はグループIと同等であった。

 グループIの臨床的寛解率は、3カ月後で28.3%、6カ月後で30.4%と良好だったのに対し、グループIIではそれぞれ12.1%、12.9%と有意に低かった(それぞれp=0.01、p=0.02 vs グループI)。また、グループIIIでは統計的有意には至らなかったものの、やはり臨床的寛解率は低い傾向(3カ月後9.1%、6カ月後10.5%)がみられた(それぞれp=0.07、p=0.12 vs グループI)。また、DAS28の変化や著効率についても同様であった。

 さらに、治療継続率について比較したところ、グループIの患者の7割以上は2年後にもMTX+TNF阻害薬による治療を継続していたのに対し、グループIIおよびグループIIIの治療継続率は5割以下だった(それぞれp<0.001、p=0.02 vs グループI)。

 以上の結果より、MTX単剤では十分な効果が得られなかった場合、ただちにTNF阻害薬の併用が試みられなかった患者では、ただちにTNF阻害薬が併用された患者に比べて、その後の疾患コントロールが不良となるだけでなく、最終的にTNF阻害薬への切り替えが行われた場合でも、その差は完全にリカバーできないことが示された。すなわち、疾患活動性を制御し、臨床的寛解への導入を図るためには、早期からの積極的なTNF阻害薬の使用が重要であると結論づけた。

(日経メディカル別冊編集)