フィンランド・Jyvaskyla中央病院のTuulikki Sokka氏

 近年の関節リウマチ(RA)治療では、早期に治療を開始し、寛解を目指す治療戦略が採用されつつある。その中で生物学的製剤の使用が急増しており、先進国(富裕国)では2005年に3割強だった使用率が2009年までに46%と5割に迫っていることが分かった。半面、貧困国では2005年に12%、2009年までに24%と急増しているものの、まだ大きな国際格差が存在しているという。RAの大規模疫学研究「QUEST-RA」の研究結果で、同研究を主導するフィンランド・Jyvaskyla中央病院のTuulikki Sokka氏が、6月16日から19日にローマで開催された欧州リウマチ学会(EULAR 2010)で報告した。

 QUEST-RA研究は欧州とした大規模疫学研究で、2005年に開始された。1国について3人以上のリウマチ専門医に依頼し、それぞれ連続100人のRA患者について、医師用3ページ、患者用4ページの詳細な調査票を作成する。2009年末までに、32カ国86施設の8039人のデータを集積した。断面調査のほか、フォローアップ調査も実施している。

 今回の報告では、4〜5年のフォローアップを実施できた18カ国の3394人のデータを解析した。18カ国の内訳は1人当たりGDPが2万4000ドル超の富裕国(先進国)と同1万1000ドル未満の貧困国である。

 結果は、2005年のベースラインにおいて、富裕国では33%のRA患者が生物学的製剤を使っていたのに対し、貧困国では12%だった。ベースライン時点で生物学的製剤を使っていなかったRA患者のうち、富裕国では20%、貧困国では14%が、フォローアップ期間中、新たに生物学的製剤の処方を受けた。ポワソン回帰分析によって推定した貧困国に対する富裕国のRA患者の使用開始率比(IRR)は、3.09(95%信頼区間:2.45-3.91)だった。調査終了時の全患者における生物学的製剤の使用率は、富裕国ではほぼ半数近い46%、貧困国では24%だった。

 Sokka氏は、「生物学的製剤の使用開始について、国の経済指標はDAS28値を上回る有意な予測因子だった。こうした格差の解消を目指すためには、AIDS治療薬と同様、生物学的製剤の開発途上国割り引きの実施など、国、患者団体、リウマチ専門医、製薬企業などの協調が必要」と指摘していた。

(日経メディカル別冊編集)