ギリシャ・アテネ大学のPetros P. Sfikakis氏

 ベーチェット病による網膜ぶどう膜炎の急性増悪(眼発作)は、脈絡膜血管の炎症に伴う血管狭窄などにより、網膜の不可逆的な器質障害を引き起こす。そのため、治療においては一刻も早くその炎症を取り去ることが重要である。ギリシャ・アテネ大学のPetros P. Sfikakis氏らは、眼発作時の治療にTNF阻害薬であるインフリキシマブ(IFX)を用いることにより、ステロイドより速やかに炎症の改善が得られたことを報告した。研究成果は6月16日から19日にローマで開催された第11回欧州リウマチ学会(EULAR 2010)で発表された。

 対象は、IFXによる継続的な治療下になく、ベーチェット病による網膜ぶどう膜炎の眼発作を来たした連続症例22例35眼。患者の平均年齢は30.5±7.2歳、男女比は14:8、平均罹病期間は4.6±4.3年であった。

 Sfikakis氏らは、(1)IFX静注(5mg/kgを単回投与)(IFX群;n=19)、(2)メチルプレドニゾロン静注(1g/日を3日間投与)(ステロイド静注群;n=8)、(3)トリアムシノロンアセトニド硝子体投与(4mgを単回投与)(ステロイド硝子体投与群;n=8)のいずれかの治療を行い、4週後までの視力の推移を追跡した。また、視神経の不可逆的変性との関連が特に強い後部ぶどう膜の炎症の状態を、ぶどう膜炎症スコアを用いて評価し、その推移を追跡した。なお、各群の患者背景に有意な偏りはなかった。

 その結果、視力の推移については各治療群で有意な差は認められなかったものの、眼炎症抑制効果についてはステロイド静注群および硝子体投与群に比べ、IFX群で有意に沈静速度が速かった(p=0.0081)。さらに、IFX群では発作による網膜炎の消失速度も有意に速く(p=0.008 vs ステロイド群)、黄斑浮腫の退縮も著明であった(p=0.007)。また、前房に浸潤した炎症細胞の減少と硝子体混濁の改善、血管炎の消失もIFX群のほうが著明であった(それぞれp<0.03、p<0.004、p<0.0001)。

 有害事象の発現は、ステロイド硝子体投与群で8眼中4眼に眼圧の上昇がみられ、うち2眼で硝子体切除術が施行された。これに対し、IFX群およびステロイド静注群では有害事象の発現は認められなかった。

 以上の結果より、IFXはベーチェット病による後部ぶどう膜炎の急性増悪をステロイドより速やかかつ安全に改善することが示された。Sfikakis氏は、「重度のぶどう膜炎発作には、常にIFXによる対処を考慮すべきであろう」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)