英国では、メトトレキサートMTX)を含む抗リウマチ薬2剤以上による治療を行っても、なお疾患活動性が継続的に高水準(DAS>5.1)である患者にしか、抗TNFα薬の投与を認められていない。しかし、中等度活動性の患者の一部は、生活障害や就労状況が高活動性患者並みに悪く、抗TNFα薬投与を含む積極的な治療が適切だという。英ロンドンのセントジョージ病院トラストリウマチ科のPhilip Kiely氏らが、6月10日〜13日にコペンハーゲンで開催された第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2009)で報告した。

 Kiely氏らは、発症早期のリウマチ患者を追跡する英国のコホート研究ERAN(Early Rheumatoid Arthritis Network)の一環として、本研究を実施した。ERANは2002年に開始され、現在までに英国の21医療機関で1009人の患者を追跡している。ERANの参加対象患者は、新規に診断が確定した発症3年以内のRA患者で、参加前にDMARDs投与を受けていない者とされた。

 本研究では、ERAN登録者のうち、DAS28とHAQスコア、および就業状況の記録があり、2年間以上の追跡が行われた16医療機関の510人を対象とした。対象者の発症時の平均年齢は55.7歳、女性69%、男性31%。追跡開始(=DMARDs治療開始)1年目のDASスコアで対象者を3.2未満群、3.2-5.1群、5.1超群に分けて追跡した。

 その結果、3.2未満群は、2年時にも70%が3.2未満にとどまったが、3.2-5.1群でDAS<3.2を達成したのは27%、5.1超群は9%だった。

 2年時のHAQスコア(0〜3で低いほど良好)が高かった(1.25-3)のは、3.2未満群では22%だったのに対し、3.2-5.1群では62%、5.1超群では83%で、疾患活動度が高いほど、生活に支障があるとする回答が増える傾向がみられた。

 また、就労を中止した割合は、3.2未満群では19%、3.2-5.1群では22%、5.1超群では27%で、やはり疾患活動度が高いほど、就労に支障が出ていることを示唆する結果だった。

 ところが、3.2-5.1群をさらに、3.2-4.1群と4.2-5.1群に分けて追跡したところ、HAQスコア≧1.25だったのは、3.2-4.1群では52%だったのに対し、4.2-5.1群は78%と高く、就労中止率も、3.2-4.1群では14%だったのに対し、4.2-5.1群は38%と5.1超群を上回っており、いずれも有意に高かった。

 これらの結果からKiely氏らは、DAS値が中等度の患者は、6割がHAQ≧1.25と生活障害度が高く、22%が就労していないなど、QOLが不十分であることを指摘、特にDAS値が4.2-5.1の患者群は状況が悪く、「生物学的製剤を含む、より積極的な治療が望ましい」とした。

 日本では、抗TNFα薬を中心とした生物学的製剤の適用は、英国のように疾患活動性による明示的な切り分けはされていないが、投与は、「DMARDsによる既存治療で効果不十分な場合に限る」などとされている(薬剤により異なる。詳細は添付文書を参照)。抗TNFα薬の適用対象外とされた、より軽度な患者に、生活障害やQOL増悪が顕著な症例が含まれることを示したKiely氏らの研究成果は、抗TNFα薬投与を検討するうえで、参考になりそうだ。