昭和大学の三輪裕介氏

 関節リウマチRA)患者には高率でうつ病の合併がみられるが、抗TNFα薬には抑うつ症状を緩和する働きがあることが報告されている。昭和大学の三輪裕介氏らは、その機序を明らかにすべく、抗TNFα薬投与に伴うRA患者の抑うつ傾向の変化と種々の疾患関連因子の変動との関連を調べ、ESRCRPQOLの動きが抑うつと連動していたことを示した。成果はコペンハーゲンで開催された第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2009)のポスターセッションで発表された。

 本検討の対象は、外来で抗TNFα薬投与を受けたRA患者74例(インフリキシマブ[IFX]59例、エタネルセプト[ETN]15例)である。三輪氏らは、これらの患者に対し、ベースライン時と治療開始14週後、30週後に疾患活動性(DAS28)と炎症指標(ESR、CRP)、血中サイトカイン値(TNFα、IL-6)を測定するとともに、抑うつ傾向SDS:self-rating depression scale)とQOLmHAQ)の評価を行った。

 次に、治療前後のDAS28スコアに基づき、患者を治療応答群(EULAR改善度good+moderate response:60例)と非応答群(no response:14例)に分け、両群の炎症指標と血中サイトカイン値、SDS、mHAQの変化を比較した。

 その結果、治療応答群におけるSDSスコアは14週後には有意に改善し(43.8±10.4→39.1±10.2、p=0.001、vs ベースライン時)、その状態は30週後にも維持されていた(39.4±10.8、p=0.001)。これに対し、非応答群のSDSスコアには有意な変化はみられなかった。

 同様に、治療応答群ではESR(ベースライン時:60±33mm/h→14週後:42±34mm/h→30週後:36±31mm/h)、CRP(4.1±4.6mg/dL→1.4±2.6mg/dL→1.0±2.2mg/dL)、mHAQ(0.76±0.65→0.41±0.41→0.31±0.35)も有意に改善した(すべてp=0.001、vs ベースライン時)のに対し、非応答群のこれらの指標には変化は認められなかった。

 一方、血中サイトカイン値(TNFα、IL-6)については、両群ともに有意な変化は認められなかった。

 以上のように、抗TNFα薬による治療は、RA患者の疾患活動性を抑制するだけでなく、抑うつ傾向の改善をももたらすこと、抑うつ傾向の改善は血中CRPとESR、QOLの改善と連動していることが明らかとなった。三輪氏らは、これらの事実を総合し、「疾患活動性の低下が直接抑うつ傾向の改善を促すとともに、疾患活動性低下に伴うQOLの改善がこれを後押しするのではないか」と推測していた。