スイスClinical Quality Managiment in Rheumatic DiseaseのAlmut Scherer氏

 急速に症状が進んだため、早期に関節リウマチ(RA)治療を開始した患者は、当初の症状が軽かったなどの理由で遅めに治療を開始した患者に比べ、長期的にみると、むしろ進展が遅くなる――こんな研究成果が、6月10日から13日にかけて、デンマークの首都コペンハーゲンで開催された第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2009)で報告された。

 スイスリウマチ学会傘下でリウマチ疾患の長期前向き研究を進めているスイスClinical Quality Managiment in Rheumatic DiseaseのAlmut Scherer氏がポスターセッションで発表したもの。早期の治療開始が良好な予後につながるとする近年のリウマチ診療トレンドを裏付ける成果として注目される。

 Scherer氏らは、スイスRA患者レジストリー(SCQM-RA)を基に、コホート研究を実施した。対象は、リウマチ専門医によってRAと診断され、追跡期間中にX線検査の継続が可能だった970人とした。

 患者は、発症1年以内に抗リウマチ薬(DMARDs)投与を開始した早期投与群(n=368)と、1年超5年以内に投与を開始した後期投与群(n=602)に分け、初回のDMARD投与時に組み入れて4年間追跡した。その間、X線検査を平均3回実施した。早期群の組み入れ時期の中央値は発症後6カ月、後期群は2年半だった。

 主要アウトカムは、関節腫脹の進行とし、Ratingenスコア(0-190、高いほど悪化)の百分率で示した。スコア算定は、他の診療経過を知らされない熟練医1人が実施した。

 ベースラインにおける早期群と後期群の患者背景のうち、年齢(中央値、55歳、後期群54歳)、性別(女性71%vs73%)、リウマトイド因子(64vs68)などには、いずれも有意差がみられなかった。DAS28-CPR(4.7vs4.1、p<0.01)、HAQ(1.0vs0.8、p=0.04)は、早期群が有意に高かった。

 また、当初の関節腫脹(Ratingenスコア)は0.94%vs1.4%で、後期群が有意に悪かった(p<0.01)が、この値を発症から組み入れまでの期間(年)で割った初期悪化率は、逆に、初期群が有意に高かった(1.8vs0.6、p<0.01)。

 DMARDsの使用は、メトトレキサート(MTX)が早期群83%、後期群80%(p=0.27)で有意差はなかったが、ステロイドは早期群65%、後期群49%で早期群が有意に多く使用していた(p<0.01)。

 4年間の追跡を行った結果、Ratingenスコアの年間増加率は、早期群が0.41%(95%CI:0.30-0.53)だったのに対し、後期群は0.59%(95%CI:0.47-0.72)と、早期群の方がゆるやかだった。後期群の組み入れ時には早期群が上回っていたが、発症後3年半ころに逆転し、以後、早期群の追跡終了時まで、差が開く一方となった。

 この傾向は、多変量解析により、ベースラインの腫脹進行の推定値、DAS28、HAQスコア、DMARDsとステロイドの使用、リウマトイド因子、性、年齢、教育水準などで調整しても有意だった(p=0.029)。

 Scherer氏は、「ベースラインのデータから明らかなように、早期群の患者は急速に症状が悪化したために、いち早く治療を開始していた。それにもかかわらず、長期的には、よりマイルドな発症だった後期群よりも進展が抑えられていた」と、早期治療開始の有用性を指摘していた。

 本研究は1995年に追跡を開始したため、生物製剤を使用していないRA患者についての分析となっているが、研究グループは生物製剤使用群についても同様の追跡を進めている。中間的な結果として、生物製剤の早期開始群(n=182)ではRatingenスコアの年間増加率が0.38%だったのに対し、後期開始群(n=160)では0.50%で、生物製剤についても、早く始めるほど進展を抑制できる可能性が示された。