「体内時計」などと呼ばれる人間の日内リズムを調節する遺伝子系が、関節リウマチRA)の増悪にも関与している可能性が示された。RA患者の睡眠障害や、かつて「リウマチ気質」などと呼ばれた特徴的な精神状態を説明できる可能性もあるという。神戸大学大学院医学研究科内科学講座免疫感染内科学教授の塩沢俊一氏らの研究で、6月10日から13日まで開催されている第10回欧州リウマチ学会・年次集会(EULAR2009)で報告した。

 研究グループは、臨床研究と動物実験の成果を総合して報告した。まず、2007年から2009年にかけて、RA患者200人に対し、睡眠の質に関する標準的調査法であるPSQI(Pittsburg Sleep Quality Index)を実施した。スコアの平均は8.55±4.69で、61.7%は睡眠の質が不良とされる5点超だった。また、活動量の測定により、睡眠時間の短縮、覚醒時間と睡眠後の覚醒回数の増加などが観察された。睡眠障害の重症度を示すこれらの値は、RAの炎症性指標であるCRP値、腫脹関節数DAS28-CRPといずれも有意な相関がみられた。

 マウスを用いた動物実験では、日内リズムとRAにおける関節炎の増悪に関連性があることが示唆された。マウスは野生型と、時計遺伝子の一つであるCryを除き、日内リズムが消失したCry ノックアウト(KO)マウスを用意し、共に関節炎を惹起して、関連する遺伝子やたんぱく質の発現を調べた。

 その結果、関節炎マウスの関節内では、日内リズムに関連したたんぱく質であるPER/CRY発現が異常となっていた。また、日内リズムの調節遺伝子として知られているPer1/2DbpBmal1のmRNAが傷害されていた。

 なかでもCry KOマウス群は、野生型群に比べ、関節炎がひどく悪化していた。この群では、c-fos遺伝子、Wee1キナーゼ、血清TNFαが特に増加しており、TNFαの発現を促すプロモーター活性が野生型の2倍になっていた。

 これらのことから塩沢氏らは、Cry遺伝子がc-fos遺伝子とWee1キナーゼを介して、体内時計の調節に関与するとともに、RAの関節炎症を引き起こすTNFαの発現を制御する、新たな経路の存在が強く示唆されたとした。この系は、リウマチ患者の炎症増悪と日内リズム調節の両方に関与している可能性がある。

 塩沢氏らは、RA患者に特徴的とされる「リウマチ気質」にも、時計遺伝子の関与で起きた睡眠障害が関連している可能性があると指摘する。睡眠導入と正しいリウマチ治療を行うことで、「気質」とされてきた精神状態の変化も改善し得るのではないかとしていた。