スウェーデンLund大学のJohan Askling氏

 関節リウマチ患者に抗腫瘍壊死因子(TNF)療法を使っても、少なくとも数年程度では発癌リスクは増大せず、治療開始からの期間や累積治療期間、効果などと発癌リスクの間にも有意な関連性がみられないことが分かった。スウェーデンにおける大規模コホート研究の成果で、同国Lund大学のJohan Askling氏が、欧州リウマチ学会(EULAR)の一般口演で6月12日に発表した。

 近年、有効性の高さから、関節リウマチ治療に抗体医薬受容体製剤などの抗TNF療法が普及しつつある。しかし、抗TNF療法によって発癌リスクが高まるかどうかについては、長期的な追跡に基づくデータがないのが現状だ。

 Askling氏らは、スウェーデンの関節リウマチ患者を網羅する3つの患者登録(入院患者、早期関節リウマチ患者、外来患者)において、1998〜2006年に登録された6万6995人を対象とした。さらに、スウェーデンの生物製剤利用登録「ARTIS」から、1998〜2005年に初めて抗TNF療法を受けた患者を特定し、6403人を解析対象とした。癌の発症については、同国の癌患者レジストリから1998〜2005年の登録者を選出した。

 抗TNF療法が有効との判定基準は、疾患活動性(DAS28)スコアによりgood/moderateと判定された患者、関節破壊の進行や身体機能を示すHAQスコアが0.2以上減少した患者、医師による総合評価(global assessment)の5段階判定で1段階以上の改善が見られた患者とした。

 抗TNF療法を受けた6403人のうち、癌を発症したのは169人で、TNF療法を受けていない関節リウマチ患者6万6995人のうち、癌を発症したのは3746人。Cox回帰分析の結果、非抗TNF療法群に対する抗TNF療法群の相対リスクは、0.94(95%信頼区間:0.80-1.12)で、抗TNF療法を使っても発癌リスクが増大することはなかった。

 抗TNF療法の治療開始からの期間ごとに算出した相対リスクは、1年未満が0.96、1〜2年目が0.77、2〜3年目が1.09、3〜4年目が1.02、4〜5年目が0.92、5年超の場合が0.88で、有意な相関は見られなかった。また、抗TNF療法による累積治療期間ごとに算出した相対リスクは、1年未満が1.00、1〜2年間が0.90、2〜3年間が0.80、3年超では0.93で、これについても相関は見られなかった。

 一般的な人口に対する、抗TNF療法群の相対リスクは1.04(95%信頼区間:0.89-1.12)だった。DAS28スコアなどを使って評価した抗TNF療法の効果と発癌リスクにも、相関は見られなかった。

 これらのデータからは、関節リウマチの患者に対する抗TNF療法が発癌リスクを高めるという結論は得られなかった。治療開始時期や治療開始からの累積治療期間、抗TNF療法の効果と発癌リスクの有意な相関も認められなかった。ただし、本研究における抗TNF療法の治療期間は5年程度に過ぎず、発癌リスクとの関連性を確認するために十分とは言い切れない。Asking氏も、「引き続き、データの収集を続けることが必要」と、今後も研究を続ける考えを示した。