大阪大学の西本憲弘氏

 抗インターロイキン6(IL-6)受容体モノクローナル抗体であるトシリズマブを投与した関節リウマチ患者で、血漿中の遊離IL-6濃度治療効果に負の相関関係があることが示された。トシリズマブ単剤とメトトレキサート(MTX)単剤を比較した、国内のSATORI試験の一部として行われた研究の成果で、大阪大学の西本憲弘氏らが、欧州リウマチ学会(EULAR)の一般口演で報告した(日経バイオテクの関連記事はこちら)。

 SATORI(Study of Active Controlled Tocilizumab monotherapy for Rheumatoid Arthritis patients with Inadequate response to MTX)試験は、MTX単剤に対するトシリズマブ単剤の非劣性を証明するために国内で行われたフェーズ3二重盲検試験。MTXを使っても一定の活動性を有する関節リウマチ患者を、トシリズマブ8mg/kg/4週と偽薬投与群、またはMTX8mg/週と偽薬投与群に割り付け、24週時点でのACR20、ACR50、ACR70の達成率などを調べた。SATORI試験に登録されたのは127人で、うち完遂したのはトシリズマブ投与群54人、MTX投与群33人だった。

 西本氏らは、トシリズマブ投与群54人のうち、トシリズマブの血中濃度を安定して測定できた44人のIL-6濃度を追跡した。すると、トシリズマブを投与した患者のIL-6濃度は、投与後に高まって4週間後に最大となり、その後、減少する傾向にあった。また、トシリズマブ投与前のCRP値とIL-6濃度との関連を調べたところ、CRP値が高いほどトシリズマブ投与後に高まったIL-6濃度が高い傾向にあることが分かった。

 24週時点で、疾患活動性DAS28)スコアが2.6以下の寛解を達成したかどうか、IL-6濃度が正常値(35pg/mg未満)になったかどうかで被験者を分類したところ、寛解に達した患者ではIL-6濃度が正常化したのが14人、しなかったのが5人だったのに対し、寛解に達しなかった患者では、IL-6濃度が正常化したのが9人、しなかったのが16人だった。

 ACR70達成とIL-6濃度の正常化についても同様に分類したところ、ACR70を達成した患者ではIL-6濃度が正常化したのが12人、しなかったのが3人、ACR70を達成しなかった患者では、IL-6濃度が正常化したのが11人、しなかったのが18人だった。

 これらの結果から、IL-6濃度とトシリズマブの治療効果は逆相関の関係にあり、IL-6濃度はトシリズマブ治療の際、離脱の可能性を判断するバイオマーカーとして有望であることが示唆された。

 ではなぜ、トシリズマブを投与してIL-6受容体を抑えるとIL-6濃度が下がるのか。西本氏は、「今のところマウスレベルでしか証明されていないが、IL-6がかかわっているTh17細胞が抑えられ、相対的に制御性T細胞が強まることで、結果的にIL-6濃度が低下する可能性がある」と説明していた。


【トシリズマブの作用機序】
 血漿中に遊離しているIL-6は、可溶性IL-6受容体または膜結合性IL-6受容体に結合した後、複合体を形成し、さらに細胞表面上に発現するサイトカイン受容体のgp130に結合してシグナルを伝えることが知られている。トシリズマブは、可溶性IL-6受容体や膜結合性IL-6受容体に結合して、遊離IL-6との結合を阻害することで、下流のシグナル伝達を止める働きをする。



【訂正】6月17日、記事中のIL-6濃度を追跡した患者について、「IL-6濃度を安定的に測定できた44人」との表記がありましたが、これは「トシリズマブの血中濃度を安定して測定できた44人」の誤りです。お詫びして訂正いたします。