英Imperial大学のSir Ravinder Maini氏

 「関節リウマチの治療には、抗腫瘍壊死因子(TNF)α療法を超える生物製剤の登場が待たれる」――。欧州リウマチ学会(EULAR)の「抗TNF製剤を超えて:新規生物製剤」と題した講演の冒頭、英Imperial大学のSir Ravinder Maini氏は、抗TNF療法の現状とこれからの関節リウマチ治療の展望について、こう切り出した。

 近年、関節リウマチの治療に抗TNF製剤を含む抗リウマチ薬(DMARDs)が当たり前に用いられるようになったことで、治療効果に対する患者や医師の期待が大幅に高まっている。

 半面、抗TNF療法で効果がみられない患者が全体の30%程度存在すること、治療開始時には高い効果を発揮していた抗TNF療法も、長期間使うと効果が薄れてくることが少なくない、といった課題もある。

 さらに、1剤目の抗TNF療法で効果が減弱し、別の抗TNF療法に切り替えた場合、その後、効果が弱まる「3次的な効果減弱」(tertiary loss of response)も臨床現場で指摘されている。生物薬剤の価格が高く、誰もが簡単に使えないことも大きな課題だ。

 Maini氏は、「これからの生物製剤には、臨床上の病状をなくし、関節破壊の進行を止め、身体機能も満足できるようにするといった、これまでの生物製剤の限界を超える機能が求められる。過剰な免疫を抑えるが、もともと宿主に備わっている免疫機構は叩かないような作用機序を持つ薬剤、例えば、TNF受容体2型(TNFR2)を狙った生物製剤は有望株のひとつだ」と指摘する。

 TNF受容体はTNFと結合すると3量体を形成し、下流にシグナルを伝える。そのシグナルを止められれば、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療につながるわけだが、それを狙って作られた抗TNF受容体抗体は、TNF受容体と結合してシグナルを伝達することが知られている。シグナル伝達を止めるはずが、TNFと同じ働きをして、逆にシグナル伝達を誘発してしまうのだ。そこで最近では、抗体の抗原結合部(Fab)だけを取り出した生物製剤が前臨床段階で開発されている。また、そのほかにも、インターロイキン(IL)15IL-8ケモカイン受容体などを狙った薬剤が開発中だ。

 Maini氏は、「安全性をさらに高めるため、バイオマーカーを利用した個の医療を進めることも必要だ。抗TNF療法よりも効果が高く、より副作用が少なく、より安い生物製剤の実現――これが、今後の関節リウマチ治療の向かう方向性のひとつになるだろう」と結んだ。