聖マリアンナ医科大学予防医学教室の須賀万智氏

 高齢化が進む日本では、今後、50年間にわたって、腰痛など筋骨格系の痛みに悩む人の比率が増え続ける――パリで開催中の欧州リウマチ学会で6月12日、こんな研究成果が示された。聖マリアンナ医科大学予防医学教室の須賀万智氏が、学会2日目の一般口演「Pain and more pain」セッションで発表したもの。

 須賀氏らは、国内5カ所の医療保険施設で、30歳以上の各1000人以上を対象としたアンケートを実施、性・年代別の筋骨格系の痛みとQOL低下について調査した。人口推計値は、国立社会保障・人口問題研究所が公表している2055年までのデータを用いた。

 筋骨格系の痛みについては、全身の29カ所で、過去1カ月間に1週間以上痛みがあったか、痛みが日常生活に支障を来したかどうかについて記入を求める質問票を、QOLについては、EQ-5D(European quality of life scale)調査票を用いた。

 調査の結果、男性3048人、女性1885人から有効回答を得た。全年齢における腰痛の有症率は、平均22.5%(男性22.5%、女性22.3%)で、性、年齢については明確な関連性は認められなかった。股関節・臀部痛は、平均2.6%(男性2.0%、女性3.7%)で、女性は男性に対し、有意に多かった。高年齢ほど有症率が高まる傾向はあるものの、有意な傾向はみられなかった。また膝痛は平均7.3%(男性6.4%、女性8.6%)で女性が有意に多く、また両性とも高年齢ほど有意に有症率が高い傾向が認められた。

 一方、QOLの指標となるEQ-5Dスコアについては、腰痛股関節・臀部痛膝痛とも、痛みがない回答者に比べ、有意に低い(悪い)結果だった。

 アンケート調査から得られた有症率をもとに、2005年から2055年までの50年間について、年代別の有症人口を推計したところ、絶対数としては、腰痛、股関節・臀部痛、膝痛とも2020年前後をピークに減少に転じる見通しになった。

 ただしこれは、日本の総人口が縮小するためのみかけの減少であり、有症率はむしろ増加が続くとみられる。2005年時点では成人人口1000人当たり225.5人だった腰痛は、2055年には229.2人へと漸増する。高齢者に多い股関節・臀部痛と膝痛は、より大きな増加傾向が見込まれる。股関節・臀部痛は2005年の人口1000人当たり32.2人から50年後には35.6人に、膝痛は同90.9人から103.3人に、それぞれ10%程度増えるという。

 これらの結果から須賀氏は、「日本において、筋骨格系の痛みは保健政策上、優先すべき仮題とはなってこなかった。しかし、今後の有症率増加も見込まれることから、QOL向上や健康寿命を伸ばすためにも、座視すべきではない」と強調していた。