炎症は、動脈硬化の発症・進展を強力に促進する危険因子であり、炎症性関節炎患者では動脈硬化が急速に進行することが知られている。したがって、炎症応答の中心的役割を担うサイトカインであるTNFαを抑制するインフリキシマブIFX)には、抗動脈硬化作用も期待されている。しかし、炎症と並ぶ動脈硬化危険因子である脂質代謝異常へのIFXの影響についてはほとんど明らかにされていない。ルーマニア・クライオバ大学のRosu氏らは、乾癬性関節炎PsA)患者28例に対するプロスペクティブな検討を進めた結果、IFXにより脂質代謝プロファイルの著明な改善がもたらされたことを報告した。

 対象は、それぞれ3個以上の腫脹関節および圧痛関節をもつ中等度〜重度のPsA患者28例(男性18例、女性10例)である。患者の平均年齢は48.1歳、平均罹病期間は10.5年であった。Rosu氏らは、これらの患者に対し、メトトレキサート(MTX)併用のもと、IFX 5mg/kgを0、2、6週目および以後8週毎に46週間にわたって投与し、ベースライン時と30週目、46週目における血清脂質値の変化を追跡した。

 ベースライン時の血清脂質値は、LDLコレステロール(LDL-C)値が144.46mg/dL、HDLコレステロール(HDL-C)値が31.39mg/dLであった。動脈硬化性疾患のリスクの指標とした動脈硬化指数(AI※)は基準値の4を大きく上回る6.1であり、きわめてハイリスクな状態であることが推測された。

 しかし、IFX投与後のLDL-C値は、30週目には138.1mg/dL、46週目には130.5mg/dLへと有意に低下した(P<0.05;0週 vs 46週)。また、HDL-C値は、30週目には33.91mg/dL、46週目には36.41mg/dLへと有意に増加した(P<0.0001)。これに伴い、AIも30週目には5.34、46週目には3.6にまで低下した(P<0.0001)。

 また、総コレステロール(TC)値もベースライン時に比して30週目には有意に低下し(P<0.0001)、その後46週目までほぼ一定であった。しかし、中性脂肪(TG)値については、30週目、46週目とも有意な変化は認められなかった。

 以上より、IFX 5mg/kgによる治療は、PsA患者の脂質プロファイルを改善し、AIの改善をもたらすことが明らかとなった。IFXは、関節リウマチ(RA)患者を対象とした過去の同種の検討においてもHDL-Cの増加をもたらすことが報告されていることから、IFXの抗動脈硬化作用は、PsAに限らず広範な炎症性関節炎に当てはまるものであることが推測される。Rosu氏らは、上述のRA患者に対する検討で用いられたIFX用量が今回より低用量(3mg/kg)であったことと、その結果得られた改善効果はHDL-Cの増加のみであったことに言及し、「高用量のIFXのほうが抗動脈硬化作用に優れるのかもしれない」と述べた。

※AI=(TC−HDL)÷HDL