関節リウマチRA)患者における心血管疾患CVD)の発症率は一般人口の2倍以上ともいわれ、RA患者の主要な死亡原因の1つとなっている。しかしながら、抗TNFα薬で治療中のRA患者では、従来の抗リウマチ薬DMARDs)を使用している患者に比してCVDリスクが低いことが報告されている。その理由を探るべく、自治医科大学内科学講座アレルギー膠原病学部門の長嶋孝夫氏らは、抗動脈硬化作用をもつ「善玉」サイトカインであるアディポネクチンの動態に着目。抗TNFα療法が血中アディポネクチンの著明な増加をもたらすことを見出した。

 アディポネクチンは、脂肪細胞が産生する生理活性物質(アディポカイン)であり、糖尿病や動脈硬化を改善する作用を有する。肥満などによって正常な脂肪細胞の機能に障害が生じ、血中アディポネクチン濃度が低下すると、CVDリスクは著明に上昇することが明らかにされている。

 長嶋氏らは、84例の日本人RA患者から抗TNFα療法前と治療開始後の血液サンプルを採取し、それぞれの血中アディポネクチン濃度をELISA法で測定した。用いた抗TNFα薬はインフリキシマブ(IFX)が56例、エタネルセプト(ETN)が28例であり、治療開始後の血液採取は、IFX群については3回目の投与後、ETN群については初回投与から3〜13カ月後(平均7.2カ月後)に行った。

 測定の結果、IFX群の血中アディポネクチン値は治療前の12.8±5.5μg/mLから、14.3±6.0μg/mLへと有意に増加していた(P<0.0001)。同様に、ETN群においても11.4±5.0μg/mLから14.1±6.0μg/mLへと有意な増加が認められた(P<0.0005)。

 治療前の血中アディポネクチン値と年齢、疾患活動性、罹病期間、BMIとの間には有意な相関は認められなかった。しかし、ステロイド使用者では非使用者に比して血中アディポネクチン値が有意に低かった(11.6±5.4μg/mL vs 14.1±4.8μg/mL、P=0.04)。また、男性では女性に比して低い傾向がうかがわれた(8.6±5.6μg/mL vs 12.9±5.1μg/mL、P=0.07)。治療後の血中アディポネクチン値の変化を男女別にみた場合は、統計的有意差をもって増加が認められたのは女性のみであった。

 以上より、日本人RA患者、特に女性患者に対する抗TNFα療法は、血中アディポネクチン値の増加をもたらすことが明らかになった。長嶋氏らは、「このことがRA患者のCVDリスクの低減につながり、ひいては死亡率の低下に結びつく可能性も考えられる」と結論した。