TNFαは免疫応答において重要な役割を担うサイトカインであり、これを抑制する抗TNF療法には、関節リウマチRA)はもとより、炎症が関与する他の疾患に対する予防や治療効果も期待されている。米国ネブラスカ大学病院のMichaud氏らは、そうした病態の1つである脳卒中に注目。リウマチ性疾患患者2万数千例の観察研究において、抗TNF薬投与患者では脳卒中リスクの著明な低下が認められたことを報告した。

 本検討の対象は、1999〜2006年の間に同氏らが遂行中の長期観察研究に登録し、少なくとも1年以上の観察がなされたリウマチ性疾患患者2万4793例である。うち1万9549例がRA、残る5244例が非炎症性リウマチ疾患(NIRD)の患者であった。

 平均3.9年の追跡において確認された脳卒中の発症は318件。発症率はNIRD患者よりRA患者で有意に高く、NIRD患者に対するRA患者の相対リスクは1.67(95%信頼区間:1.21-2.32)であった(P=0.002)。また、318件のうち虚血性脳卒中と確認された79件についてみた場合は、相対リスクは2.00(1.02-3.95)とさらに高まっている(P=0.045)。

 しかしながら、何らかの抗TNF療法を受けていたRA患者では、同療法を受けていない患者に比して脳卒中の発症が著明に抑制されていた(相対リスク:0.41[0.30-0.55]、P<0.001)。同様に、虚血性脳卒中に限定した場合も、抗TNF療法により著明なリスク低下が認められた(相対リスク:0.52[0.32-0.85]、P=0.009)。これらの傾向は、既知の心血管危険因子やRAの病態・病期について補正した後でも変わらなかった。対照的に、プレドニゾロンの投与は脳卒中のリスクを約2倍に増加させていた(P=0.005)。

 なお、わが国で使用可能な抗TNF薬はインフリキシマブ(IFX)とエタネルセプト(ETN)であるが、IFXの全脳卒中に対する抑制効果はETNより有意に高かった(相対リスク:0.40 vs 0.67、P=0.019)。また、IFXは虚血性脳卒中に対する抑制効果も著明であったが(相対リスク:0.45、P=0.008)、ETNでは有意な抑制効果は認められなかった(相対リスク:0.83、P=0.64)。本邦未発売の抗TNF薬であるアダリムマブには、全脳卒中、虚血性脳卒中のいずれに対しても有意な抑制効果は認められなかった。

 以上より、RA患者はNIRD患者に比べて脳卒中の発症リスクが67〜100%も高まること、抗TNF療法、特にIFXの投与は脳卒中リスクを大幅に低下させることが明らかとなった。IFXがRAの病態のみならず、生命予後やQOLに影響を及ぼす脳卒中という合併症も予防することを示唆する今回の知見は、これからのRA治療のありかたを考えるうえで大きな意味を持つものといえよう。