関節リウマチRA)はいったん発症すると寛解維持は困難なため、効果的な予防法の登場が待たれている。フランス国立医学研究ユニットのLaure Delavallee氏らは、ヒトTNFαを高発現させたマウスに対して、開発が進められているヒトTNFαワクチンを接種することで、炎症を有意に軽減できることを確認、6月14日の一般口演で報告した。ヒトへの応用はまだ先の話だが、開発が進むようなら、RA高リスク群の1次/2次予防や早期RAの治療用として注目されそうだ。

 抗TNFα抗体は、日本でもRA治療用の生物学的製剤として承認され、利用が拡大しつつある。有効性が高いのが特徴だが、抗体を外部から体内に導入する「受動免疫療法」であるため、高価なことと、導入した抗体に対する中和抗体ができて効果が喪失する可能性がある。

 そこでDelavallee氏らは、抗原を体内に導入して抗体産生を刺激する「能動免疫療法」となるTNFαワクチン「ヒトTNFαキノイド」を開発した。これは貝に由来するKLHと呼ばれるたんぱく質にTNFαを載せたもの。KLHは抗原性を強める作用がある。

 研究グループは、ヒトTNFαを高発現させた遺伝子組み換えマウスを用いて、TNFαにによって起こる慢性と急性の炎症に対するワクチンの効果を調べた。このマウスは関節炎モデルマウスで、生後8〜10週で必ず関節炎を発症する。治療群のマウスには、生後5〜7週からワクチンを3回(0日、7日、28日)筋注し、対照群にはKLHのみを筋注した。この遺伝子組み換えマウスは生後8〜10週で関節炎を自然発症する。実験ではワクチン接種後4カ月にわたって追跡した。

 ワクチン接種後、治療群のマウスは高い抗体価を示し、誘導された抗体はhTNFαの生物活性を中和した。

 すべてのマウスが関節炎を発症したが、治療群では対照群に比べて発症が13.4日遅く(P<0.05)、関節炎スコアの最大値が大幅に低く(1.4 vs 8.6、P<0.01)、炎症の組織学的スコア(0.1 vs 1.5、P<0.01)、関節破壊スコア(0.1 vs 1.2、P<0.01)も有意に低かった。

 治療群のマウスは炎症が治り、4カ月の試験期間終了時の関節炎罹患率は、対照群は100%(7匹中7匹)だったのに対し、治療群が12.5%(8匹中1匹)だった(P<0.001)。

 研究グループは次に、ヒトTNFαとD-ガラクトサミンをマウスの腹腔内に注射して、急性の肝細胞障害によるショックを誘導する実験を行った。

 ワクチン接種最終回から10日後にこれらを投与したところ、治療群はすべて(n=6)生存し続けたが、対照群はすべて(n=6)死亡した。ワクチン接種を受けていない個体に抗ヒトTNFα血清を投与したところ、ショックから保護することができた。

 ただし、永久に免疫できるわけではないようだ。ワクチンを3回接種したにもかかわらず、4カ月の試験期間中に抗体価が減少傾向を示したという。

 最も気になるのは安全性で、フロアからも真っ先にこの点を問う質問が出たが、Delavallee氏は、マウスTNFαキノイドを作製してマウスに投与する実験を行わないと、安全性については言及できない」と指摘していた。

 なお、本報告の一部は論文化されており、Proceedings of National Academy of Science(PNAS)誌2006年12月19日号に掲載されている。アブストラクトはこちらで閲覧できる。