抗TNF療法癌発生リスクに及ぼす影響はよく分かっていない。スウェーデン・カロリンスカ大学病院臨床疫学准教授のJohan Askling氏らは、関節リウマチRA)に対する抗TNF療法により、癌の総リスクは増加しないものの、癌種によってリスクが低下するものと上昇するものがあることを、6月14日の一般口演で報告した。

 抗TNF療法が癌発生リスクに及ぼす影響については、無作為化試験の解析で一部の癌種で早期に著しく増加する可能性が示唆されている。一方、観察研究では、一部の癌種でリスク増加が報告されているものの、癌の総リスクの増加は見出されていない。Askling氏らは、抗TNF療法に関係するすべての癌発生を偏りなく評価するため、長期にわたる調査を実施した。

 対象は、スウェーデンの3つの重複する全国登録(早期RA登録、入退院登録、外来患者登録)に登録され、1998年1月時点で生存していた、抗TNF療法を受けていないRA患者6万6471例(抗TNF療法群)と、スウェーデン生物学的製剤登録に登録された抗TNF療法を受けたRA患者6297例(非抗TNF療法群)。

 これらの患者について、2005年12月までの生存状況と癌発生を、国民登録や癌登録の記録をもとに追跡し、非抗TNF療法群に対する抗TNF療法群の相対リスクをCox回帰分析によって評価した。評価においては、性、出生年、地域で層別化し、併存疾患(COPD、関節手術、心血管疾患、糖尿病、感染症)で調整した。また、抗TNF療法と併存疾患は時間依存変数とした。

 結果として、抗TNF療法群では6297例中217例に、非抗TNF療法群では6万6471例中5404例に癌が発生した。非抗TNF療法群と比較した抗TNF療法群の全癌の相対リスクは0.99(95%信頼区間0.85〜1.14)で両群のリスクは同等だった。抗TNF療法開始後の期間別にみた全癌の相対リスクは、1年未満0.98(同0.75〜1.27)、1〜3年0.88(同0.70〜1.11)、3年以上0.99(同0.78〜1.27)で、有意差はないものの1〜3年時に一過性の低下傾向がみられた。

 部位別の癌リスクを評価すると、肺癌非メラノーマ性皮膚癌リスクは、有意差はないものの、抗TNF療法群の方が高い傾向にあった。逆に乳癌リスクは抗TNF療法群の方が有意に低かった。

 Askling氏は、「抗TNF療法を受けたRA患者における癌の総リスクは増加しないが、肺癌や非メラノーマ皮膚癌など一部の癌種ではリスクが増加する可能性があり、今後も監視が必要だ。逆に、乳癌のようにリスクが低下する癌種もあるのは興味深い」とまとめていた。