米スタンフォード大学特任教授のGurkirpal Singh氏

 シクロオキシゲナーゼ(COX)-2選択的阻害薬を含む非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を服用している患者では、急性心筋梗塞のリスクが増加することが知られている。しかしアスピリンを同時に服用した場合、そのリスクは減少する可能性のあることが、大規模なコホート内症例対照研究で明らかになった。米スタンフォード大学特任教授のGurkirpal Singh氏らの研究グループが、6月22日の口演セッション「関節症の臨床的側面と治療」で発表した。

 研究グループは、カリフォルニア州が運営する低所得者・障害者向け医療保険メディケイドの患者記録データを用い、COX-2選択的阻害薬および非選択的阻害NSAIDsを服用した患者において、アスピリンの投与、非投与で急性心筋梗塞の発症リスクを比較した。これまで少数での比較研究はあったがヒトでは有意な差は得られていなかった。

 対象は変形性関節症あるいはリウマチ性関節症の患者。1999年1月から2004年6月までのデータで該当した患者は68万8424人。このうち急性心筋梗塞を発症して入院あるいは死亡した患者が1万5343人、死亡率は8%だった。アスピリン服用者は20万3323人、その6割が81〜160mg/日と低用量だった。

 NSAIDs服用者の急性心筋梗塞リスクを、2カ月以上NSAIDsを服用していない人と比較した結果、COX-2選択的阻害薬セレコキシブを服用し、アスピリンを服用していない人のリスクは1.12倍と有意に高かったが、アスピリン服用者では0.88倍(95%信頼限界:0.76〜1.02)と有意差はなくなった。同様にロフェコキシブでは、それぞれ1.31倍(同:1.20〜1.43)、1.03倍(同:0.86〜1.24)で、アスピリン服用でリスク増加が低減する傾向が見られた。

 COX-2非選択的NSAIDsでは、メロキシカムが、アスピリン非服用の急性心筋梗塞のリスクは1.52倍(同:1.14〜2.03)だが、アスピリン服用では0.53倍(同:0.26〜1.10)と、リスク減少傾向が見られた。ところがイブプロフェンではアスピリン非服用で1.08倍(同:0.97〜1.19)に対し、アスピリン服用で1.20倍(同:0.94〜1.51)と、有意差はないもののリスクが増加する傾向があった。

 これらの結果から研究グループは、選択的COX-2阻害薬と一部のNSAIDsの服用による急性心筋梗塞リスクの増加は、アスピリン併用で打ち消されることが明らかになったとしている。このことは、COX-2阻害薬やNSAIDsがプロスタサイクリン生成を阻害することで、心血管リスクを増大させていることを示唆するものだとする。また、一部のNSAIDsでアスピリンの併用効果がみられなかったは、それらの薬剤がアスピリンとCOX-1の結合を妨げ、アスピリンの抗血小板作用を抑えるためではないかと説明していた。

 一方、臨床応用の際、気になるのは、アスピリン併用によってCOX-2阻害薬の利点である消化管出血リスクの低さが損なわれないかという点だ。これについてSingh氏は、併用してもCOX-2阻害薬の利点がすべて失われるわけはないとして、メリット、デメリットがアスピリンや非選択的NSAIDsと選択的COX-2阻害薬の単独使用の中間に落ち着くことを示唆していた。