英マンチェスター大学のW. G. Dixon氏

 関節リウマチ(RA)患者では、冠動脈疾患の罹患とそれによる死亡が多いことが知られている。その原因として、両者に共通した炎症性反応が指摘されている。英マンチェスター大学のW. G. Dixon氏は、抗TNFα療法による炎症抑制動脈硬化プラーク安定化をもたらし、心血管疾患の抑制に働くのではないかという仮説を立て、自国の患者登録システムBSRBRのデータをもとに抗TNFα療法を受けた患者の心血管疾患リスクを解析した。この検討結果は、6月23日に口演された。

 英国リウマチ学会(BSR)の生物学的製剤レジストリー(BSRBR)は、前向きのコホート試験として運営されており、生物学的製剤および他の標準的治療を受けているRA患者の長期経過が収集されている。同氏は、このデータベースを用いて、抗TNFα療法を受けた患者(抗TNFα療法群)と従来の抗リウマチ薬による治療を受けた患者(DMARDs群)の心血管疾患の発生頻度を比較した。

 解析対象は、抗TNFα療法群が8073例(平均年齢56歳、罹病期間中央値12年、DAS28の平均値6.6、HAQの平均値2.1)と、DMARDs群が1807例(平均年齢60歳、罹病期間中央値6年、DAS28の平均値5.0、HAQ平均値が1.5)。高血圧糖尿病の罹患率および喫煙歴には有意差がなかったが、高脂血症治療薬抗血小板薬の服用率はDMARDs群が比較的多かった。

 心筋梗塞の発症率(/1000人・年)は、抗TNFα療法群が5.6、DMARDs群が7.2人であり、有意な発症リスクの低下は認められなかった。しかし、抗TNFα療法群のうち、投与開始6カ月後にEULAR の判定基準でレスポンダーとみなされた患者では、DMARDs群に比べて72%のリスク低下が示された。

 また、脳血管障害の発症率(/1,000人・年)は、抗TNFα療法群が3.9、DMARD群が5.7人であり、抗TNFα療法群で49%のリスク低下が認められた。
 
 Dixon氏は以上の結果を踏まえ、「基礎研究において、TNFαは動脈硬化を進展させる炎症性メディエーターの1つであることが知られている。今回の検討から、RA患者に投与された抗TNF薬が、実際に心血管疾患の発症リスクを低下させたことは、非常に大きな意味を持っている。抗TNFα療法によりRAの疾患活動性が低下した患者では、同時に心血管イベントのリスクも低下し、生命予後の改善が期待される」と語った。