神奈川県立がんセンター呼吸器外科の坪井正博氏

 非小細胞肺癌NSCLC)のステージIAに対してはこれまで有効な補助化学療法が発見されていなかったが、テガフール・ウラシル(UFT)による術後補助化学療法で同ステージの患者の生存率が有意に改善されたことが、6件の試験データの再解析から明らかになった。日本臨床腫瘍グループ(JCOG)肺がん外科のグループ代表を務める神奈川県立がんセンター呼吸器外科の坪井正博氏(写真)が、9月20日から24日にドイツ・ベルリンで開催されている第15回欧州癌学会(ECCO)・第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で報告した。

 NSCLCで完全切徐を行った後の生存率は、まだ満足できるものとはいえない。リンパ節転移や遠隔転移がなく、術後病理組織学的分類(p-TNM)でIAと判断されるT1N0M0の患者の 5年生存率は73〜83.3%と報告されている。UFTでステージIB、白金製剤のシスプラチンでステージII、IIIの患者の生存率がそれぞれ改善されたとする報告はあるが、ステージIAについてはまだなく、有効な術後補助化学療法が必要と考えられる。

 「TNM悪性腫瘍の分類第7版」では、NSCLCの臨床病期IA 期T1は、腫瘍径が2cm以下の「T1a」と2cmを超えて3cm以下までの「T1b」にさらに分類されている。

 坪井氏らは、西日本肺癌手術の補助化学療法研究会(WJSG)による臨床試験など、UFTについての6件の無作為化比較対照試験に基づく2005年のメタ分析のデータを再解析し、リンパ節転移のないT1の腫瘍がある患者において、T1aとT1bに対するUFTの有効性を評価した。

 結果を再解析した6件の試験では、いずれも患者を無作為に手術単独群と術後にUFTを併用する群に割り付けており、フォローアップ期間の中央値はそれぞれ6.5年と6.4年であった。

 1985年から1997年の計2003人のデータから、IAに該当したのは1269人で、670人(52.8%)がT1a、599人(47.2%)がT1bであった。

 T1aの患者の5年生存率は、手術単独群で85%、術後にUFTを併用した群で87%であり、統計学的な有意差はなかった(p=0.37)。T1aの患者の全生存率をフォレスト・プロットでみると、ハザード比は0.84であった。

 一方、T1bの患者の5年生存率は、手術単独群で82%、術後にUFTを併用した群で88%であり(p=0.011)、有意差を認めた。またフォレスト・プロットによるハザード比は0.62であった。

 サブ解析では、術後のUFTの投与と、年齢、性別、組織型との相互作用のエビデンスは認められなかった。

 坪井氏は「UFTによる術後補助化学療法が、T1bN0M0の患者の生存率を有意に改善したことが分かった。現在このような患者集団を対象とした大規模なRCTを開始している」と話した。