近畿大学医学部内科学腫瘍内科の金田裕靖氏

 進行性の固形癌の患者に対するフェーズ1試験において、経口のマルチキナーゼ阻害剤BIBF1120(海外での商名:Vargaref)は200mgでの1日2回投与の忍容性が良好であることが確認され、臨床的ベネフィットとしては安定状態が高い割合で得られた。成果は、9月20日から24日にドイツ・ベルリンで開催されている第15回欧州癌学会(ECCO)・第34回欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で、近畿大学医学部内科学腫瘍内科金田裕靖氏(写真)が発表した。

 BIBF1120は、血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)1から3、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)αとβ、線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1から3のチロシンキナーゼを阻害することで、血管新生を阻害し腫瘍の増殖を抑えることが期待されている。

 金田氏らは、進行性固形腫瘍の患者21人(男性11人、女性10人、平均年齢62歳)を対象として、 BIBF1120の安全性、忍容性、最大耐用量(MTD)、薬物動態(PK)、予備的に有効性を検討した。 

 BIBF1120は1日2回とし、150mgを3人、200mg を12人、250mgを6人に投与した。

 その結果、可逆性の用量制限毒性(DLT)として、有害事象共通用語基準(CTCAE)グレード3または4の肝酵素の上昇、すなわち用量制限毒性が200mg投与群では12人中3人、250mgの投与群では6人中3人に発生した。このため、MTDは200mgと判断された。報告された有害事象の多くは嘔吐や食欲不振、下痢のほか、グレード1または2の胃腸障害で、対象の85.7%に認められた。治療関連死亡は報告されなかった。

 奏効として完全奏効(CR)や部分奏効(PR)は認められなかったが、安定状態(SD)が対象の16人(76.2%)に認められた。無増悪生存期間(PFS)は113日(95%信頼区間:77〜119日)だった。

 BIBF1120のMTDでは、最高血中濃度(Cmax)には投与後約2時間で到達した。CmaxおよびCmax,ssの平均はそれぞれ52.0ng/mLと67.6ng/mLとなった。

 薬物動態の解析により、BIBF1120の定常状態には1日2回投与の8日後に到達し、CmaxおよびAUCは投与量の増加に比例して上昇することも明らかになった。
 
 BIBF1120については、非小細胞肺癌(NSCLC)の標準的なセカンドライン治療と併用する国際的なフェーズ3試験、LUME-Lung試験の患者登録が現在進行中である。

 金田氏はこれらの結果を受けて、「BIBF1120はVEGFR2も阻害する点が特徴的。 今回のフェーズ1試験でみられた毒性はシンプルで可逆性であり、さらに今回の試験ではPR以上の奏効は得られなかったものの、SDを7割以上の症例で認めた。今後の検討が必要であるが、期待が持てる治療薬と考えられる」とコメントした。