福岡赤十字病院循環器内科の目野宏氏

 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)ロサルタンとヒドロクロロチアジド配合剤(以下Los/HCTZ合剤)の3年間の投与により、脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が20pg/mL以上あった症例では同値が低下し、長期的な心血管イベント予防効果が期待できることを、6月14日から17日までイタリア・ミラノで開催された欧州高血圧学会(ESH2013)で福岡赤十字病院循環器内科の目野宏氏らが報告した。

 既に目野氏らは、本研究の1年間の成績を発表している。今回の報告は、同集団を計3年間追跡した結果だ。対象は、ARBをベースとする降圧治療を3カ月以上継続しても降圧目標に到達しなかった本態性高血圧患者。

 主要評価項目は36カ月後のBNP値とし、副次評価項目として血圧、血清尿酸値、血糖値、血清脂質値を検討した。本研究には203例が登録されたが、今回は3年後まで追跡できた78例を対象に解析した。

 患者背景は平均年齢66歳、男性53%、BMI25.2kg/m2、腹囲径87.6cmで、56%が脂質異常症、23%が糖尿病、21%が高尿酸血症、13%が不整脈、23%が腎機能障害を合併していた。また心血管疾患の既往症として、19%に虚血性心疾患、15%に左室肥大、10%に脳卒中があった。

 収縮期/拡張期血圧はベースライン時の156/86mmHgから3カ月後には137/77mmHgに有意に低下(P<0.001)。その後も血圧値は安定的に推移し、36カ月後には131/73mmHgとなった。心拍数には有意な変動はなかった。

 高血圧治療ガイドライン(2004年版)に基づく36カ月後の降圧目標達成率は50%だった。これを患者背景別に見ると、高齢者(降圧目標:140/90mmHg未満)では81%、若年者(130/85mmHg未満)は45%、糖尿病/慢性腎臓病合併例(130/80mmHg未満)は35%だった。

 血清BNP値(評価対象40例)は、ベースライン時の47.5pg/mLから12カ月後には45.0pg/mL、36カ月後には36.2pg/mLと低下傾向にあったが、有意ではなかった。これをベースライン時のBNP値によって高値群(20pg/mL以上)と低値群(20pg/mL未満)に分けると、高値群ではベースライン時の79.8pg/mLが12カ月後には69.4pg/mLに有意に低下し(P<0.05)、36カ月後には53.1pg/mLまで低下した(P<0.01)。なお、このBNP値の変化と、拡張期および収縮期血圧の変化との間には、有意な相関は認められなかった。

 尿酸値は、ベースライン時5.54mg/dLが24カ月後には5.80pg/dLと有意上昇を見たが(P<0.05)、36カ月後は5.61pg/dLで有意差はなかった。

 血糖値、HbA1c値、血清脂質値に有意な変動はなかったが、血清クレアチニン値はわずかながら有意上昇、推算糸球体濾過量はわずかながら有意低下を観察した(どちらもP<0.001)。血清電解質のうちNa、Cl、Kは有意に低下した測定点があったが(P<0.05〜0.001)、その変動はわずかで、かつ正常範囲内だった。

 有害事象は12カ月後までに185例中16例(9%)で発現し、その内訳は高尿酸血症が5例、過度の血圧低下が2例、低K血症、脳梗塞、肝機能障害がそれぞれ1例だった。また12カ月以降は下肢のしびれが78例中1例(1%)で発現した。死亡例はなかった。

 目野氏は「Los/HCTZ合剤への切り替えにより優れた降圧効果が長期間持続し、BNP高値症例では同値が有意に低下した。BNP値の低下は将来の心血管イベント予防に寄与する可能性があり、より多数例長期間での検討が望まれる」と結論した。