University of Milano-BicoccaのGiuseppe Mancia氏

 今回発表された2013年版ESH-ESC高血圧管理ガイドラインでは、2007年版で心血管リスクなどにより異なっていた降圧目標を、収縮期血圧140mmHg/拡張期血圧90mmHgに一元化した。その上で、糖尿病や高齢者に対する目標値を別に設定した。さらに降圧目標を達成できない場合、多剤投与も含めた迅速な積極的治療への移行を促した。また高血圧症の診断にあたり、外来血圧だけでなく、家庭や24時間自由行動下の血圧測定値についても考慮に入れる点を強調したのも特徴だ。

 新ガイドラインの薬物治療について、6月15日、ミラノで開催中の欧州高血圧学会ESH2013)で同ガイドライン作成委員会の委員長を務めるUniversity of Milano-BicoccaのGiuseppe Mancia氏が発表した。

 降圧薬の選択については、その種類による推奨順位は提示しない点を確認した。また多剤投与の組み合わせについては、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)とアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬を「推奨できない組み合わせ」と明記したほか、新たに推奨度を格上げ・格下げした組み合わせを示した。

 さらに、血圧値が高め正常値の人への降圧治療は、心血管リスクにかかわらず不要だとした点も注目に値する。

高血圧患者の降圧目標を140mmHgに、高齢者の目標値は緩和

 高血圧患者の降圧目標値については、2007年版では心血管リスクなどにより目標値を分けていたが、今回は同リスクの如何にかかわらず、収縮期血圧値140mmHg(拡張期血圧値は90mmHg)に一元化した。その上で、(1)糖尿病患者については、拡張期血圧値の目標値は85mmHgとする。80〜85mmHgへのコントロールも、安全で耐性がある、(2)80歳未満高齢者で収縮期血圧値が160mmHg以上の場合には、150〜140mmHgを目標とする。患者の健康状態が良好であれば140mmHg未満への降圧も考慮する、(3)80歳以上の高齢者で収縮期血圧値が160mmHg以上の場合には、患者が身体的・精神的に健康であれば150〜140mmHgへの降圧を推奨する――とした。

 糖尿病患者については、前回ガイドラインで降圧目標値としていた収縮期血圧値130mmHgが140mmHgに緩和されたことになる。

 また、正常血圧域で血圧が高めの人については、降圧治療は必要ない点も新たに明記した。

降圧目標未達成の場合、単剤投与から2剤投与も含めより迅速で積極的な治療を

 新ESH-ESC高血圧管理ガイドラインでは、降圧目標に達しない場合には、単剤の用量増加や薬の変更、単剤投与から2剤投与といった、より積極的な降圧治療への変更を速やかに行うべきだ、と強調した。

 単剤と併用の治療戦略を示すアルゴリズムには、前回から大きな変化はないものの、当初単剤投与で目標値を達成できない場合、増量投与と種類の変更への移行と共に、その過程を経ずに2剤投与へ直接移行する選択肢を加えた。場合によっては、単剤で試行錯誤する前に、速やかに2剤に移行すべきだという積極治療への推奨を示した格好だ。

薬に種類にかかわらず降圧が大切、Ca拮抗薬-β遮断薬は推奨からはずれる

 薬の種類の選択については、抗高血圧治療の効用の大部分は降圧にあり、薬の種類により異なる降圧メカニズムではないとし、薬の種類への推奨順位はしない、と明言した。その上で、医師が患者の状況に合わせて、降圧目標の達成に向けた適切な薬を選択すればよいとしている。

 多剤投与の場合、その組み合わせについて、今回新たにARBとACE阻害薬との組み合わせは、「推奨できない」とした。また、2007年版で推奨していたカルシウム(Ca)拮抗薬とベータ(β)遮断薬の組み合わせについて、「推奨される組み合わせ」から「可能だが、試験結果の少ない組み合わせ」に格下げした。また、β遮断薬とサイアザイド系利尿薬の組み合わせを、「実用的な組み合わせ(いくつかの限界はある)」とし、「推奨される組み合わせ」と「可能だが、試験結果は少ない組み合わせ」の中間に位置づけた。

 その他、2007年版と同様に「推奨される組み合わせ」としたのは、ARB-サイアザイド系利尿薬、ARB- Ca拮抗薬、サイアザイド系利尿薬- Ca拮抗薬、Ca拮抗薬- ACE阻害薬、ACE阻害薬-サイアザイド系利尿薬だった。