国立病院機構九州医療センター高血圧内科の榊美奈子氏

 24時間蓄尿による尿中食塩排泄量は測定値の変動が大きく、高血圧患者の長期的な食塩摂取量を評価するためには複数回行って判断した方がよいことが明らかになった。国立病院機構九州医療センター高血圧内科の榊美奈子氏らの検討結果で、6月14日からイタリア・ミラノで開催されている欧州高血圧学会(ESH2013)で発表した。

 高血圧患者の食塩摂取量は毎日一定していない上、減塩指導や患者ごとの食習慣による影響も受ける。今回、榊氏らは、定期的に24時間蓄尿による尿中食塩排泄量の測定を行っている高血圧患者を対象に、尿中食塩排泄量の長期間の推移や測定値の変動性などを検討した。

 対象患者は、最も短い場合で3年間に10回以上、24時間蓄尿による尿中食塩排泄量の測定を行った高血圧患者186人。うち女性が103人で、平均年齢58.5歳、平均追跡期間は7.7年だった。初回から10回目までの尿中食塩排泄量の変化や血圧値などとの関連を調べた。

 ベースライン時で145/85mmHgだった血圧は、10回目の尿中食塩排泄量測定時には130/70mmHgと、有意に低下していた。この間、投与降圧薬数は平均1.1剤から1.9剤と有意に上昇し、尿中食塩排泄量は9.54g/日から8.54g/日に有意に減少していた(いずれもP<0.01)。

 患者のすべての尿中食塩排泄量測定値の平均は8.94g/日で、最小値が5.23g/日、最大値が13.4g/日、範囲が8.21g/日に及び、変動係数も29.2%と大きかった。

 まず各患者について、初回の尿中食塩排泄量と10回の平均値との関連をみたところ、両者の間には、有意な正の相関がみられた(r=0.62、P<0.01)。

 ただし、初回の尿中食塩排泄量に基づいて三分位し、各分位にあった患者が、10回の平均値に基づいて三分位したときにどの分位になるかを調べたところ、どちらも同じ分位になった患者は、全体の56.2%にとどまった。10回すべての平均値を「長期間の食塩排泄量」と考えれば、初回の1回で長期間の食塩排泄量を予測できた患者は半数ということになる。

 ちなみに1回目と2回目の尿中食塩排泄量の平均値を三分位して同様な検討を行うと、どちらも同じ分位になった患者の比率は上昇し、6割を超えた。

 また、わが国の高血圧治療ガイドラインでは、1日の食塩摂取量として6g未満を推奨している。だが186人の患者中、10回すべての検査で6gを下回った患者は4人だった。小柄な高齢女性であり、食事量の少なさが目標達成に寄与したと考えられた。達成率5割以上、つまり10回中5回以上の検査で目標を達成した患者も26人(14%)だったほか、一度も達成できなかった患者が61人(33%)に上り、0〜3回達成という患者が147人(79%)と多数を占めた。

 これらの結果から榊氏らは、「平均7.7年の追跡で投与降圧薬は増加し、血圧は低下、尿中食塩排泄量も有意に低下していた。ただし尿中食塩排泄量は測定値の変動が大きく、初回の1回の測定でその後の長期間の変動が推測できる患者は半数にとどまった。患者の食塩摂取量を評価するためには、蓄尿による尿中食塩排泄量の測定は複数回行って判断した方がよいと考えられる」と結論した。