スペインHospital Universitario 12 de OctubreのL. M. Ruilope-Urioste氏

 医師の健康状態は他の職業集団と比べて良好だという報告があるが、それらは構造化インタビューに基づくものであり、心血管リスクの保有状況について客観的な評価を行ったものではなかった。スペインHospital Universitario 12 de OctubreのL. M. Ruilope-Urioste氏らは、スペイン人医師の心血管リスクの保有状況などを調べ、他の職業集団と比較検討した結果、喫煙者は少なく、血圧管理は良好であったが、脂質管理は十分ではなかった。6月18日からミラノで開催されていた第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で報告した。

 本研究は、定期的な健康診断を受けている労働者93万人のデータに基づく横断研究である。その内訳は、医師(医師群)が1488人、他の科学的な知的専門職(専門職群)が8万3075人、それ以外の職業に従事している者(他の職業群)が82万1580人であった。

 医師群の背景は、平均年齢37.5歳、男性44.7%であった。年齢分布を比較すると専門職群、他の職業群に比べて医師群では40歳代が多く、30歳未満が少なかった。

 医師群の心血管リスク因子の保有率をみると、脂質異常症が43.1%、直近12カ月における喫煙が29.6%、高血圧が17.4%、肥満(BMI30kg/m2超)が9.0%、内臓脂肪型肥満が13.3%、メタボリックシンドロームが6.6%で、3.4%がハイリスクと判定された。

 リスク因子の保有状況を他の職業集団と比較すると、直近12カ月における喫煙については、医師群(29.6%)は専門職群(33.4%)や他の職業群(50.4%)より低かった。脂質異常症については、医師群(43.1%)は他の職業群(44.6%)より少なく、専門職群(41%)より多かった。さらに、40歳未満に限定して比較すると、医師群は41.6%、他の専門職群は37.9%、他の職業群は39.6%となり、医師群が最も高かった。

 高血圧に関しては、専門職群(19%)や他の職業群(22.5%)に比べて、医師群(17.4%)の方が低かった。肥満についても、専門職群(10.6%)や他の職業群(14.5%)よりも、医師群(9%)の方が低かった。

 高血圧と診断された患者の治療率を調べたところ、医師群75.9%、専門職群70.2%、他の職業群69.1%と、医師群で高い傾向が認められた。一方、脂質異常症と診断された患者の治療率は医師群26.4%、他の専門職群27.5%、他の職業群29.7%と、医師群が最も低かった。

 高血圧あるいは脂質異常症と診断された患者に限ってみると、血圧は医師群が136.5/85.3mmHg、専門職群が142.7/87.6mmHg、他の職業群が146.6/88.3mmHgと、医師群が最も低かった。一方、総コレステロールは順に220.4mg/dL、213.0mg/dL、216.9mg/dL、またトリグリセライドは同じく209.2mg/dL、150.7mg/dL、162.7mg/dLと、医師群が最も高く、コントロールが不良であった。

 以上の検討からRuilope-Urioste氏は、「医師の心血管リスクの保有状況は想定していたほど他の職種より低くなかった。医師群では喫煙者が少なく、収縮期血圧もコントロールされていたが、脂質異常症の保有率は特に若年者で高く、総コレステロールやトリグリセライドの管理状況は十分ではなかった」と結論した。

 さらにRuilope-Urioste氏は、「心血管疾患リスクを抱えている状況では、生活習慣の改善を適切に実行する必要がある。しかし、今回の結果を見ると、医師自身が生活習慣の改善に関心を持っているかどうかは疑わしいものだった」と述べた。最後に聖書の言葉を引用し、「Medice, cura te ipsum(医者よ、汝自身を治せ)」の教えを考慮していないのではないかと指摘した。

(日経メディカル別冊編集)