木原循環器科内科医院の木原一氏

 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)やACE阻害薬などのRA系阻害薬の単剤治療では十分な降圧を得られない患者が散見される。RA系阻害薬で降圧不十分な拡張期心不全を合併する高血圧患者において、ARB/ヒドロクロロチアヂド(HCTZ)合剤での治療に切り替えることにより、良好な血圧コントロールを得られるだけでなく、左室拡張機能を改善することが報告された。木原循環器科内科医院(旭川市)の木原一氏らが、6月20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で発表した。

 ARBと利尿薬の合剤は、実臨床において高い降圧効果が得られることが実証されつつある。しかし、利尿薬は心不全患者の息切れや浮腫を軽減する一方で、RA系を活性化させ、左室拡張機能を低下させることも指摘されている。

 木原氏らは、多施設共同研究 EDEN(The Effect of a combination of angiotensin receptor blocker and DiurEtics on left ventricular diastolic fuNction in hypertensive patients)を実施しており、RA系阻害薬による治療から、ARB ロサルタン50mgと利尿薬 ヒドロクロロチアジド12.5mgの合剤(LOS/HCTZ合剤)への切り替えが、左室拡張機能に与える影響を検討した。

 試験の対象は、左室駆出率(LVEF)が50%以上の拡張期心不全を合併した高血圧患者で、僧帽弁輪速度(e')が8cm/秒未満またはE/e'比が12超の患者とし、ARBあるいはACE阻害薬による治療で、降圧目標値を達成できていなかった371人。

 これらの患者に対してARBあるいはACE阻害薬による治療期間4週後にLOS /HCTZ合剤に切り替え、24週間追跡した。4週、8週、24週時点で血圧を測定し、BNP値、CRP値(hs-CRP)を4週時点と24週時点に測定した。また、切り替え前と24週時点で心エコー検査を実施し、e'、E/e'比、左室駆出率(EF)、左室重量係数(LVMI)、左心房容積係数(LAVI)を算出した。一次評価項目としてe'およびE/e'比の変化、二次評価項目は血圧値、BNP、hs-CRPの変化が設定された。

 その結果、平均収縮期血圧は、切り替え前の155mmHgから、24週時には133mmHgへと有意に低下した。拡張期血圧も87mmHgから76mmHgに有意に低下した。心拍数は73bpmから71bpmに有意に低下した(すべて、P<0.001)。

 また、e'は、切り替え前の5.5cm/秒から、24週時には6.5cm/秒に有意に改善し、同様にE/e'比は、12.1から10.6へと有意に改善した(ともに、P<0.001)。LVMIは、102g/m2から96g/m2に有意に改善し、LAVIも25mL/m2から23 mL/m2に有意に改善した(ともに、P<0.001)。さらに、BNP値は48.6pg/dLから36.5pg/dLへ、hs-CRPは0.5mg/dLから0.3mg/dLへ、それぞれ有意に低下した(P<0.001、P<0.001)。

 木原氏らは、e'の改善に関与している因子を単変量解析により検索したところ、収縮期血圧、拡張期血圧、クレアチニン、BNP、hs-CRP(以上すべて、P<0.001)、eGFR(P<0.009)の変化が、有意な寄与因子として同定された。また同様に多変量解析では、収縮期血圧(P<0.001)、BNP(P<0.018)、hs-CRP(P<0.001)の変化が有意な寄与因子となることが示唆された。

 このような結果から、木原氏は「RA系阻害薬単剤からARB/HCTZ合剤への切り替えにより、良好な血圧管理が得られただけでなく、左室機能も改善された。心肥大も有意に抑制され、心筋の障害も軽減されることが示唆された。ARB/HCTZ合剤は拡張期心不全を伴う高血圧患者において、左室機能の改善を期待できる薬剤と言えるだろう」と結んだ。

(日経メディカル別冊編集)