横浜市立大学循環器・腎臓内科学の押川仁氏

 アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)単独で十分な降圧を得られない高血圧患者には併用療法が推奨されているが、併用薬としてCa拮抗薬、利尿薬のいずれを選択するか、特に日本においては議論の余地がある。横浜市立大学循環器・腎臓内科学の押川仁氏らは、ARBと利尿薬の合剤による治療は、ARBとCa拮抗薬の併用療法と同等の降圧効果を得られることを、6月20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で報告した。

 ARBと利尿薬の併用は、異なる機序の相乗効果による降圧効果の増強が得られ、利尿薬がもたらすRA系の亢進をARBが相殺するという理に適った降圧療法だ。一方、ARBとCa拮抗薬との併用は日本でも広く定着している。Ca拮抗薬の降圧効果が高いこと、代謝系への影響が比較的少ないことがその背景にある。

 押川氏らは、ARB/利尿薬の合剤とARBとCa拮抗薬の併用における有効性と安全性を比較検討するために、K-CATThe Kanagawa Combination Antihypertensive Therapy)研究を実施した。

 K-CAT研究は、神奈川県内の医療施設による前向きのオープンラベル無作為化試験で、対象はARB単剤で1カ月以上治療を受けている高血圧患者のうち、収縮期血圧140以上160mmHg未満、もしくは拡張期血圧90以上100mmmHg未満(糖尿病、CKDを合併する場合は、収縮期血圧130以上160mmHg未満、もしくは拡張期血圧80以上100mmHg未満)とした。拡張期血圧が120mmHg以上の血圧コントロール不良、血糖コントロール不良、心血管疾患の6カ月以内の既往、肝障害などを認める患者は除外した。

 これらの患者を、ロサルタン50mg/ヒドロクロロチアジド12.5mg合剤を投与するLOS/HCTZ群と、ロサルタン50mgとアムロジピン5mgを併用するLOS/AML併用群に無作為に割り付けた。降圧目標値を140/90mmHg未満とし、糖尿病およびCKDを合併している場合は130/80mmHg未満を目標に治療を開始した。両群とも、3カ月時点で必要に応じてロサルタンの増量、さらに試験開始6カ月時点でα遮断薬もしくはβ遮断薬などの追加投与が可能だった。

 一次評価項目は、併用療法開始3カ月時点の収縮期血圧の変化。二次評価項目は、6、9、12カ月時点の収縮期血圧、および3、6、9、12カ月時点の拡張期血圧が設定され、1年間の追跡が行われた。またアドヒアランスと代謝系への影響も評価した。

 LOS/HCTZ群58人、LOS/AML併用群62人を対象に解析が行われた。登録時の両群の年齢、BMI、男女比、血圧値、合併症、その他の生化学パラメーターに差はなかった。

 その結果、LOS/HCTZ群では収縮期血圧が登録時の150.8mmHgから3カ月時点で131.3mmHgに、AML併用群では153.1mmHgから131.4mmHgに低下したが、両群間の降圧度に差はなかった。両群とも追跡期間のすべての時点において、収縮期血圧、拡張期血圧ともに良好な血圧コントロールが維持されていた。降圧目標の達成率も差はなかった。

 また、12カ月後の血清カリウム濃度、血糖値、HbA1c値、コレステロール値には両群間に差はなかったが、尿酸値はLOS/AML併用群の5.2mg/dLに比べ、LOS/HCTZ群では6.2mg/dLと有意に高かった(P<0.001)。LOS/HCTZ群を登録時の尿酸値5.6mg/dL未満(29人)と5.6mg/dL以上(26人)のサブグループに分け、尿酸値の推移を解析した。その結果、5.6mg/dL未満群のみが有意な上昇を示し(P=0.014)、5.6mg/dL以上群では変化はなかった。

 推算糸球体濾過量(eGFR)は、追跡期間を通して両群ともに70mL/分/1.73m2前後で推移したが、LOS/AML併用群に比べてLOS/HCTZ群では有意に低値だった(P=0.002)。服薬アドヒアランスは、両群間で差はなかった。

 2008年にBakrisらは、ACE阻害薬ベースの併用療法では、利尿薬よりもCa拮抗薬を併用した方が降圧効果が高かったことを報告している。押川氏らはK-CAT研究の結果に際し「欧米人に比べて塩分摂取量が多いという、日本人の特性が反映されたのではないか」と考察している。同氏は今回の試験結果を受け、「ARB/HCTZ合剤は、ARBとCa拮抗薬の併用療法と同等の降圧効果が期待できる」と結論づけた。

(日経メディカル別冊編集)