JA静岡厚生連 遠州病院の橋本朋美氏

 塩分の摂りすぎが高血圧や心血管イベントの危険因子となることは広く知られているが、個々の体格を考慮せず一律に「1日何g」と塩分摂取量を評価するだけでよいのだろうか? JA静岡厚生連 遠州病院(浜松市)内科の橋本朋美氏らは、7126人の一般住民を対象とした調査の結果、総摂取量だけでなく体重で調整した塩分摂取量の増加も、臓器障害の危険因子となることを明らかにした。6月20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で報告した。

 検討の対象は、2009年に遠州病院で年1回の定期検診を受けた7126人。平均年齢は56.4歳(21〜88歳)、男性が4486人(63%)だった。平均の血圧値は、収縮期血圧(SBP)125.5mmHg、拡張期血圧(DBP)76.7mmHgで、30.5%(2171人)が高血圧患者だった。

 夜間尿中Na量から算出された1日当たりの推定塩分総摂取量は10.9g、体重10kg当たりの塩分摂取量は1.83gだった。高血圧群におけるこれらの値は11.9gと1.93gで、正常血圧群の平均値(10.5g、1.79g)より有意に高かった(ともにP<0.0001)。なお、降圧薬服用の有無は塩分摂取量には影響しなかった。

 総塩分摂取量ならびに体重で調整した塩分摂取量と相関する因子を単変量解析により探索したところ、年齢、男性、SBPなどとともに、臓器障害マーカーとしてBNP、心電図変化(SV1+RV5)、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)などの因子が同定された。

 さらに、BNPとUACRについては、多変量解析でも総塩分摂取量、体重10kg当たり塩分摂取量との間に弱いながら有意な相関が認められた(BNP:各r=0.191、r=0.218、UACR:各r=0.067、r=0.090、すべてP<0.0001)。これらの相関は、正常血圧者(n=4955)を対象とした解析でも同様に認められた。

 以上の結果より、高血圧による臓器障害の発症あるいは進展には、塩分の総摂取量だけでなく、個々の体重で調整した塩分摂取量も独立した危険因子となる可能性が示唆された。

 たとえば小柄な男性などの場合、1日当たりの塩分総摂取量が多くなくても、体重当たりの塩分摂取量は「危険域」にあるという可能性がある。橋本氏らは、「体格がさまざまな高血圧患者の臓器障害を予防するためには、体重で調整した塩分摂取量が有用な管理指標になるのではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)