東北大学の伊藤貞嘉氏

 慢性腎臓病CKD)を伴う高血圧患者が高尿酸血症を合併すると、心血管イベントのリスクがさらに高くなる。腎障害が進行しつつあるCKD患者において、血清尿酸値(SUA)の変化が腎機能、心血管イベント発症に影響を及ぼす可能性が、日本人高血圧患者を対象とした大規模前向き観察研究 J-HEALTHのサブ解析によって示された。6月20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で、東北大学の伊藤貞嘉氏らが報告した。

 J-HEALTH研究は、ロサルタン(25〜50mg/日、必要に応じて100mgまで増量)をベースとしたレジメンで治療を受けている日本人高血圧患者3万1048人を追跡した大規模前向き観察研究。伊藤氏らは、同研究の登録患者のうち2回以上の血清クレアチニン値の記録がある7629人の解析から、CKDを呈する高血圧患者(推算糸球体濾過量:eGFRが60mL/min/1.73m2未満)が高尿酸血症を合併すると、心血管イベントリスクが2倍以上に高くなることを、2010年の第23回国際高血圧学会(ISH2010)において報告している(関連記事)。

 伊藤氏らは、CKD合併患者3733人をさらに、登録時のeGFRが45mL/min/1.73m2未満のサブグループ(45未満群、n=850)とeGFR 45-60mL/min/1.73m2のサブグループ(45-60群、n=2883)に分け、CKDを合併していない患者(非CKD群、n=3896)を加えた3群間における詳細な比較検討を行った。

 その結果、平均3.1年間にわたるロサルタンベースの降圧治療に伴い、eGFRはすべての群で有意に改善し(45未満群:38.1→57.6、45-60群:52.8→67.5、非CKD群:74.7→80.7、すべてP<0.05)、45未満群における改善度が最も高かった。

 各群における心血管イベントの発生率は、45未満群が13.0/1000人・年、45-60群が5.9/1000人・年、非CKD群が4.4/1000人・年で、非CKD群と比較した45未満群、45-60群の相対リスク(RR)は、それぞれ2.81(95%信頼区間:1.80-4.39)、1.37(95%信頼区間:0.94-2.00)となり、45未満群できわめて高かった。

 さらに、eGFRの変化と心血管イベント発生率の関連について、試験終了時にeGFRが低下した(<0%)群の、変化なしあるいは上昇した(≧0%)群に対する相対リスクは、45未満群では2.10、45-60群1.34、非CKD群で1.49と45未満群においてはeGFRが低下するとイベント発生率の上昇がより高まることが示唆された。

 eGFRの変化と相関する危険因子を多変量回帰分析で検索したところ、加齢、男性、登録時の拡張期血圧、追跡期間中の収縮期血圧、1年間の蛋白尿などとは独立して、登録時のSUA値、追跡期間中のSUA値、1年間のSUA変化量などが有意な危険因子として同定された。

 SUAが1年間で1mg/dL上昇した場合に予想される将来のeGFR低下量は、CKD非合併群で1.31、45-60群で1.84、45未満群は2.71になり、尿酸値の変化が前述のeGFRの改善に関連していることが示唆され、特に45未満群ではeGFRの改善における尿酸値低下の寄与度がより高いことが考えられる。

 また試験期間中のSUAと登録時のeGFRおよび心血管イベントの関連を見た場合、45-60群におけるSUAが7mg/dL以上のサブグループにおいて、7mg/dL未満のグループに比べ心血管イベントが有意に上昇し、この傾向は45-60群の患者でより強いことが示された。

 これらの結果から、CKD合併高血圧患者の心血管イベントを予防するためには、降圧に加え、eGFRの改善が重要であること、また特に腎機能低下が進行した患者ではeGFRの維持・改善を意識した治療が必要であることが示された。また近年注目されている尿酸と臓器保護の関連において、本研究からはeGFRが45-60の群において、よりイベントへの影響が大きいことも示唆された。

 伊藤氏は、J-HEALTH研究が、腎保護作用に優れたARBのなかでも尿酸低下作用を併せ持つロサルタンで治療を受けている患者を対象としていることに言及し、「ロサルタンによる尿酸低下作用が本研究で示されたeGFRの改善に寄与している可能性がある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)