ブルガリアNational Heart HospitalのK. Hristova氏

 左室肥大を伴う高血圧患者では右室機能も低下していることが指摘されているが、その詳細は十分には検討されていない。そこでブルガリアNational Heart HospitalのK. Hristova氏らは、高血圧と高血圧性の心リモデリングが右室機能に及ぼす影響を心エコーで検討し、その結果を6月18日からミラノで開催された欧州高血圧学会(ESH2011)で報告した。

 本研究の対象は、左室肥大を伴う高血圧患者40例(LVH群)と健康者20例(健康群)とした。LVH群に症候性心不全患者は含まれていなかった。

 全例に心エコー検査を行い、心尖部四腔断層像はフレーム速度74±6フレーム/分で測定し、局所の壁運動と方向をベクトルを用いて表示するvector velocity imaging法を用いて壁運動を定量的に評価した(心筋ストレイン法)。

 LVH群および健康群の年齢はそれぞれ68歳、31歳、身長はそれぞれ173cm、174cm、体重はそれぞれ85kg、67kg、体表面積はそれぞれ1.99m2、1.80m2と、LVH群は健康群に比べて高齢で体重が重かったが、身長と体表面積には有意差はなかった。また、収縮期/拡張期血圧は、LVH群156/87mmHg、健康群115/67mmHgとLVH群で有意に高かったが、心拍数には差はなかった。

 心エコー所見を比較すると、左室駆出率はLVH群62%、健康群66%と有意差はなかったが、LVH群では健康群に比べて、壁厚(13.49mm vs 9.2mm)、左室心筋重量(LV mass 264g vs 173g)、左室径(51.05cm vs 46.03cm)、左室拡張終期容積(LVEDV 109.6mL vs 81.1mL)、左室収縮終期容積(LVEDV 48.7mL vs 38.4mL)が有意に大きかった。僧帽弁流入路のE/A比はLVH群0.75、健康群1.87とLVH群で有意に小さかった。

 一方、左室伸縮度(左室PSS)はLVH群−16.4%、健康群−19.7%と群間に有意差を認めなかったが、右室伸縮度(右室PSS)はLVH群−10.0%、健康群−15.5%と、LVH群で有意に小さく、右室の伸縮速度ピーク値(PSR)もLVH群で有意に低かった(0.45 vs 1.75 1/秒)。

 右室PSSを領域別に検討すると、中央部(−11.2 vs −17.2%)、心尖部(−7.9 vs −12.3%)ともにLVH群では健康群に比べてPSSは有意に低かったが、心基部(−12.3 vs −14.0%)のPSSに差はなかった。

 以上の結果から、Hristova氏は、左室肥大を伴う高血圧患者では右室変形能が低下しており、明らかな拡張不全型心不全がない状態であっても、早期から無症候性の右室機能不全が認められると結論した。

(日経メディカル別冊編集)