スイスUniversity Hospital of LauzanneのM. Bochud氏

 アフリカ系米国人では、臓器障害の危険因子の一つとされる夜間高血圧を呈する食塩感受性高血圧患者が多いことが、いくつかの報告で示されている。白人においても、ナトリウムの排泄不良が夜間高血圧の機序となる可能性が、6月18日から20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で示された。スイスUniversity Hospital of LauzanneのM. Bochud氏らが発表した。

 健常者の血圧日内変動には、夜間の降圧と早朝覚醒時の血圧上昇が観察される。non-dipperに代表される夜間の降圧が不十分な高血圧患者では、さまざまな臓器障害のリスクが高くなる。Bochud氏らは2008年に、東アフリカ系住民(セーシェル人)のコホート研究から、昼間のナトリウム排泄量の低下が夜間高血圧、もしくは夜間降圧度の減少につながることを示した。今回は白人を対象にした、追従研究が行われた。

 対象は、ローザンヌ(スイス)の一般住民6128人のコホート研究CoLaus studyから抽出した白人437人のうち、24時間自由行動下血圧(ABPM)などの基礎データが得られた351人(男性174人、女性177人)。平均年齢は56.7歳、平均収縮期血圧が昼間120.8mmHg、夜間105.5mmHg。43%が高血圧で、その半数がすでに治療を受けていた。

 昼間と夜間に採尿し、その内因性リチウム排泄分画とクレアチニン・クリアランスを基に、近位尿細管におけるナトリウム再吸収量(RNa prox)を推算した。さらに、尿中ナトリウム排泄量の昼間/夜間比(UNa DN ratio)も算出した。

 UNa DN ratioにより、昼間ナトリウム排泄不良群(UNa DN ratio 0.6、n=121)、中間群(同1.1、n=112)、昼間ナトリウム排泄良好群(同1.9、n=118)の3群に分け、各群における夜間の降圧度を比較検討した。その結果、収縮期血圧の降圧度は、不良群11%、中間群13%、良好群16%、拡張期血圧は不良群12%、中間群11%、良好群15%となり、有意な群間差を認めた。

 収縮期血圧の降圧度により、降圧不良群(4%)、中間群(14%)、良好群(20%)の3群(各n=117)に分け、それぞれのRNa proxを比較検討した。その結果、夜間のRNa proxには大きな差はなかったが、昼間のRNa proxは降圧不良群89%、中間群90%、良好群85%となり、有意な群間差を認めた。

 これらのことから、Bochud氏らは、白人においても近位尿細管におけるナトリウム再吸収量が随時収縮期血圧とは独立して、夜間収縮期血圧を規定する因子となると結論づけた。さらに、昼間の近位尿細管におけるナトリウム再吸収の増加が、夜間の降圧度の減少に関連する可能性があることも示唆した。

 白人も昼間のナトリウム排泄量が不十分な場合、夜間血圧の上昇を招きやすく、心血管イベントの発症リスクが高いことが推察される。

(日経メディカル別冊編集)