ポーランドMedical University of GdanskのAgnieszka Rojek氏

 内臓脂肪型肥満は心血管イベントや代謝障害の重大なリスク因子であり、左心房の容積が増大すると心房細動のリスクが上昇することが報告されている。ポーランドMedical University of GdanskのAgnieszka Rojek氏らは、健康な若年集団を10年間追跡し、左心房拡大に関わる因子として、ウエスト周囲径の増大と夜間収縮期血圧の上昇を同定した。これらの研究成果は、6月18日から20日までミラノで開催された第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で報告された。

 Rojek氏らは、内臓脂肪型肥満の発症と左心房容量指数(LAVI)との関連性を検討するため、健康な若年男性(医学部学生)のうち、身体計測所見や基本的な臨床検査項目に異常がなく、診察室血圧の平均が140/90mmHg未満の者を対象に選んだ。なお、1日10本を超える喫煙者やBMIが35kg/m2以上の者、スポーツ選手は除外した。身体計測と一般的な臨床検査、診察室血圧測定のほかに、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)、心エコー検査を行った。

 解析対象の母集団は145例であったが、そのうち10年後に対象となったのは68例であった。この68例の登録時の年齢は23歳、身長は181cm、体重は74.8kg、BMIは22.7kg/m2、ウエスト周囲径は83.9cm、ウエスト/ヒップ比は0.84と、母集団の背景とよくマッチしており有意差はみられなかった。

 10年後のウエスト周囲径をみると、対象者の74%で増加し、23%で減少していた。なかでも「0〜6cmの増大」が多くを占めていた。診察室血圧をみると、収縮期血圧は128±14mmHgから127±12mmHg、拡張期血圧は77.2±8.5mmHgから77.3±9.2mmHgと、ほとんど変化していなかった。

 しかしABPMで昼間血圧をみると、収縮期血圧は125±10mmHgから129±10mmHg、拡張期血圧が74.2±7.0mmHgから80.3±6.9mmHgと、有意に上昇していた(それぞれP=0.01、P<0.001)。夜間血圧についても、収縮期血圧が109±9mmHgから115±12mmHg、拡張期血圧が59.5±7.3mmHgから66.4±8.3mmHgと、有意な上昇が認められた(いずれもP<0.001)。

 次に、対象者をウエスト周囲径が増加した群(増加群)とそれ以外の群(安定群)に分け、10年後の血圧値を比較したところ、昼間の収縮期血圧は増加群で有意に高かったが(P=0.03)、診察室や夜間の収縮期血圧には群間差はなかった。拡張期血圧では、いずれについても有意な差は認められなかった。

 LAVIは増加群が21.8±4.5mL/m2、安定群が18.5±4.0 mL/m2と、増加群で有意に高く、左心房容量(LAV)も同様に増加群で有意に高かった(いずれもP=0.01)。一方、left atrial systolic function(LASF=0.53×MOA×Va2)は、増加群が8.56±3.72 kdyn、安定群が7.41±3.24 kdynと、有意差はなかった。

 多変量ロジスティック回帰分析を行ったところ、LAVIの増大を予測する独立した因子として、ウエスト周囲径の増大と夜間の収縮期血圧の上昇が同定された。

 以上の結果を踏まえRojek氏は、「内臓脂肪型肥満の発症と夜間収縮期血圧の上昇は左心房の拡大に寄与している」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)