高血圧患者は血圧コントロールができていても年単位でみると健康関連QOLが低下しており、その影響因子として、年齢、教育水準や社会経済的ステータスの低さ、社会的支援の少なさなどが示された。6月18日から20日までミラノで開催されている第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で、ポーランドMedical College of Jagiellonian UniversityのMarek Klocek氏らが、本態性高血圧患者を6年間追跡した結果を基に報告した。

 本研究の対象は本態性高血圧患者1002例(男性497例、女性505例)で、平均年齢は49.8±14.5歳、高血圧罹病期間は10.2±8.7年。このうち、6年間にわたり追跡できたのは939例(男性460例、女性479例)であった。

 健康関連QOLは登録時および2年ごとに、Psychological General Well-being(PGWB)およびEuroQoL(EQ)-5Dを用いて評価し、臨床所見および社会的要因との関連性を検討した。検討に含めた臨床所見は血圧、BMI、合併症、薬物療法の変化、心血管疾患の発症、心血管死。社会的要因は学歴、既婚・未婚、社会的支援、社会経済的ステータスとした。

 登録時の血圧は147.6/91.1mmHg、降圧薬の服用数は2.7±1.5剤であった。健康関連QOLスコアはPGWBが87.9±17.1、EQ-5Dが68.8±12.0で、スコアは女性よりも男性、高齢者よりも若年者、そして教育水準の高い患者、社会経済的ステータスの高い患者、合併症のない患者で有意に高かった(いずれもP<0.01)。

 追跡期間中における新規発症は、脂質異常症が38.4%、糖尿病が11.0%、冠動脈疾患が5.6%、その他の疾患が31.2%。また健康関連QOLスコアは年々低下しており、PGWBは登録時87.9±17.1から6年後73.4±21.3に、EQ-5Dは68.8±12.0から59.8±18.5にそれぞれ有意に低下した(いずれもP<0.001)。健康関連QOLスコアの低下度は女性の方が男性に比べて著しかった(P<0.01)。

 6年後の血圧は129.9/80.9mmHgと登録時に比べて有意に低く(P<0.01)、降圧薬の服用数は5.5±3.3剤と有意に増えていた(P<0.01)。性別を問わず6年後のQOL低下の有意な影響因子として、年齢、教育水準の低さ、社会経済的ステータスの低さ、社会的支援の少なさ、失業、他の疾患の新規発症が同定された。

 降圧薬の服用数が3剤未満の患者では、健康関連QOLスコアが高かった。登録時に健康関連QOLに悪影響を及ぼす因子の保有数が多いほど、登録時の健康関連QOLスコアが低く、かつ6年後のスコアも低かった。また、いずれの健康関連QOL指標においても、スコアが低い群では死亡リスクが高かった

 以上の検討からKlocek氏は、「高血圧患者では血圧がコントロールできていても健康関連QOLは経時的に低下していた。その傾向は女性で顕著であり、いくつかの臨床所見や社会学的要因が健康関連QOLを低下させる要因であることも示された」と結論し、「高血圧患者では健康関連QOLが低いと死亡リスクは高まる可能性がある」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)