フィンランドTurku University HospitalのTeemu Niiranen氏

 フィンランドにおける家庭血圧に関する研究Finn-Home Studyによれば、拡張期血圧のみ高く収縮期血圧は高くない、孤立性拡張期高血圧IDH)患者の予後は正常血圧(NT)者と同等であった。フィンランドTurku University HospitalのTeemu Niiranen氏らが、6月18日から20日までミラノで開催されている第21回欧州高血圧学会(ESH2011)で報告した。

 高血圧患者の予後予測は診察室血圧よりも家庭血圧に基づいた方が優れていると知られているものの、家庭血圧測定により孤立性収縮期高血圧(ISH)あるいはIDHと判定された患者の予後は十分に検討されていなかった。家庭血圧に基づいて高血圧患者の予後を検討した研究はこれまで日本の一般住民を対象とした大迫研究のみであり、IDH患者の心血管死のリスクは低く、NT群と同レベルだったと報告されている。

 Finn-Home Studyは、フィンランドで2000年秋から2001年春にかけて実施された全国規模の調査である。45〜74歳の2120人が登録されたが、今回の研究ではデータの欠落がない2081人が解析対象となった。

 ベースラインの家庭血圧は連続7日間、1日2回、朝と夜に座位で測った。健康診断は各地域の健診センターで行い、採血して血清脂質と血糖値を測定した。2007年12月31日まで追跡し、死亡および発生イベントのデータは全国規模の死亡および退院データベースから得た。主要評価項目は心血管イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、心不全による入院、経皮的冠動脈インターベンション[PCI]あるいは冠動脈パイパス術[CABG]の施行)とした。

 家庭血圧測定に基づく高血圧の病型分類は、高血圧(HT)が収縮期血圧(SBP)≧135mmHgかつ拡張期血圧(DBP)≧85mmHg、ISHがSBP≧135mmHgかつDBP<85mmHg、IDHがSBP<135mmHgかつDBP≧85mmHg、NTがSBP<135mmHgかつDBP<85mmHgとした。その結果、HT群は483人、ISH群は284人、IDH群は121人、NT群は1193人となった。患者背景を比較すると、ISH群はIDH群に比べてやや高齢で、糖尿病合併率が高く、心血管イベントの既往例が多かったものの、喫煙率は低かった。

 平均6.8年間の追跡期間中に心血管イベントは162人(8.0%)で発生した。その内訳は、非致死的心筋梗塞が35人(1.7%)、非致死的脳卒中が35人(1.7%)、心不全による入院が27人(1.3%)、心血管死が25人(1.2%)、PCI施行が21人(1.0%)、CABG施行が19人(0.9%)であった。

 高血圧の病型別に心血管イベントの発生率をみると、NT群は4.4%、IDH群は2.5%、ISH群は13.7%、HT群は13.9%であった。年齢、性別、服用中の降圧薬、心血管イベント既往、喫煙習慣、脂質異常症、糖尿病の有無で補正し、NT群に対する心血管イベント発生リスク(ハザード比)を求めたところ、HT群は2.13(95%信頼区間 1.48-3.07)、ISH群は1.58(同 1.03-2.44)と有意に高かったが(順にP<0.001、P=0.04)、IDH群は0.58(同 0.19-1.78)と有意差は認められなかった(P=0.34)。

 このようにIDH群の心血管イベント発生リスクはNT群と同レベルであったことから、Niiranen氏は「拡張期家庭血圧よりも収縮期家庭血圧をターゲットとした降圧治療を行うことで、患者の予後は改善するのではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)