大阪大の武田朱公氏

 降圧療法による認知症発症の減少は複数の大規模試験で報告されているが、機序の解明には至っていない。6月19日、HYPERTENSION2008のポスターセッションにおいて大阪大の武田朱公氏(写真)らは、オルメサルタンアルツハイマー型認知症の抑制に有用である可能性を、マウスを用いた検討で報告した。

 まず武田氏らは12週齢雄性ddYマウスを「オルメサルタン1.0mg/kg/日」群、「ヒドララジン30mg/kg/日」群、「ニフェジピン10mg/kg/日」群に分け、28日間投与の後、側脳室にアミロイドβ1-40(200pmol/5μL)注入を2回行い、さら17日間、薬剤投与を継続した。

 その結果、血圧は薬剤非投与群、対照群(不活性ペプチド、アミロイドβ40-1を注入)に対し、薬剤投与群では3群とも有意な降圧を認めた(p<0.05)。

 薬剤投与3群間の血圧に有意差はなかったにもかかわらず、オルメサルタン群でのみ、認知機能の低下が有意に抑制された。すなわち、Morris水迷路試験において、プラットフォームへの到達時間が対照群と同等だったのはオルメサルタン群のみであり、またprobe testにおいて薬剤非投与群に比べ記憶力の有意な改善が認められたのもオルメサルタン群のみだった。

 そこでオルメサルタンによるこの学習・記憶機能改善の機序を探ると、アミロイドβ1-40注入により引き起こされる海馬長期増強現象(hyppocampal long-term potentiation)の減弱が、オルメサルタンにより有意に抑制されていた。またwhisker刺激に対する機能的脳血流増加の障害もオルメサルタンにより回復し(p<0.01)、正常化していた。

 さらにAPP遺伝子改変マウス(アルツハイマー型認知症動物モデル)では、オルメサルタン1.0mg/kg/日投与により、減弱していたwhisker刺激に対する機能的脳血流増加反応を有意に改善した。さらに同モデルで増加していた脳微小血管の酸化ストレスも、オルメサルタンにより抑制されていた。

 武田氏らは今後、アルツハイマー病の発症メカニズムにおけるACE、AII、AIVなどレニン・アンジオテンシン系の因子の関与ならびにβアミロイドの相互作用を検討し、アルツハイマー病発症抑制に向けてRA系抑制の可能性を探索する予定だという。