米University of Chicago、Pritzker School of MedicineのMichael H. Davidson氏らは、この20年間に報告されたスタチンの臨床試験のデータを統合解析する探索的研究を行い、最近の臨床試験では試験登録時の頸動脈内膜中膜複合体厚(cIMT)とLDLコレステロール値(LDL-C値)が低下していることを明らかにした。本研究の成果は、8月31日までパリで開催されていた欧州心臓学会(ESC2011)で発表された。

 解析対象は1988〜2008年の期間に実施され、文献報告された17試験(ACAPS、ARBITER IおよびII、ASAP、BCAPS、CAIUS、CAPTIVATE、CASHMERE、ENHANCE、KAPS、LIPID、METEOR、PLAC II、RADIANCE-IおよびII、REGRES、VYCTOR)とし、各試験のスタチン投与群のデータを統合して解析に用いた。

 cIMTは、各試験の試験登録時および最終評価時の総頸動脈の全測定値の平均値を用い、その報告がない場合には単回測定値を採用し、試験ごとに平均して解析に用いた。また、全測定値の最大値による同様の解析も行った。

 血清脂質値に関する解析は17試験の6788例を対象に行った。試験登録時のLDL-C値(平均値)は、2000年以前に報告された8試験では185.8mg/dL、2000年以降に報告された9試験では154.9mg/dLと、前者の方が高かった。

 また、試験登録時のLDL-C値は、家族性高コレステロール血症(FH)患者の方がそれ以外の患者に比べて高値だったほか、若年者の方が高齢者に比べて高値、スタチン投与後のLDL-C低下率が大きい患者の方が小さい患者に比べて高値だった。

 さらに、試験登録時のHDLコレステロール(HDL-C)値は、2000年以前に報告された試験の方が2000年以降に報告された試験に比べて低値であり、冠動脈疾患リスクの保有例の方が非保有例に比べて低値だった。

 一方、cIMTに関する解析は13試験、5771例を対象に行った。対象全体の試験登録時のcIMT平均値は0.7700mmで、報告年が新しくなるに従い、1年に0.0024mmずつ減少していた。また、2000年を境に層別解析を行ったところ、2000年以前に報告された5試験ではcIMTは0.8521mm、2000年以降に報告された8試験では0.7458mmと、前者の方が高く、1年当たりの減少量はそれぞれ0.0119mm、0.0013mmと前者で大きかった。

 すなわち、2000年以前に報告された試験の参加者は、試験登録時のLDL-C値が高く、cIMTが肥厚しており、スタチン投与後のLDL-C低下率が大きかったことになる。

 また、cIMTは冠動脈疾患リスクの保有例の方が非保有例に比べて高値、若年者の方が高齢者に比べて高値、スタチン投与後のLDL-C低下率が小さい患者の方が大きい患者に比べて高値だった。

 このように、試験登録時のLDL-C値とcIMT値、1年当たりのcIMT減少量は、2000年以前に報告された試験に比べて2000年以降に報告された試験で、低値ないし小幅だった。Davidson氏はデータを提示しなかったものの、cIMT最大値を用いた検討でも結果は同様だったとした上で、「得られた結果は、実地臨床において近年LDL-C管理が積極的に行われたことを反映したものであり、cIMTを指標として用いた臨床研究の結果に差がつきにくい原因になっている可能性もある」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)