頸動脈ステント留置術(CAS)施行時に発生するデブリ(小片)は、塞栓源となって脳血管合併症の原因になる可能性がある。このデブリ発生にLDLコレステロール(LDL-C)とC反応性蛋白(CRP)の高値が関連していることが、新たに示された。イタリアUniversity of PisaのMarco De Carlo氏らによるCAS施行例を対象とした前向き観察研究の成果で、8月31日までパリで開催されていた欧州心臓学会(ESC2011)で発表された。

 CAS施行時には塞栓症を予防するため、末梢塞栓保護デバイス(EPD)が用いられる。拡散強調MRIによる画像診断では、EPDを使用してもなお、CAS施行患者の多くに小領域ながら複数の無症候性虚血領域を認める。しかし、慎重にEPDを用いることで有害事象の頻度を低減することができる。

 De Carlo氏らは今回、CAS施行中に発生する塞栓症の予防を目指し、CAS施行患者の塞栓症に関連する背景因子の同定を試みた。

 対象は、重度の症候性あるいは無症候性頸動脈狭窄に対してCASを施行した患者で、遠位端フィルターのみ、あるいは近位閉塞デバイスを用いた連続188例(男性79.3%、症候性例33.0%)とした。

 CAS終了時にフィルターに捕捉されたデブリの量を目視で確認し、デブリがほとんど確認されなかった症例を非塞栓群、デブリが確認された症例を塞栓群とした。

 Open cellステントの使用率は52.7%、遠位端フィルターは85.6%の患者で、近位閉塞デバイスは14.4%の患者で使用された。これらのデバイスの使用率に、群間差は認められなかった。また、CAS成功率は100%だった。

 対象症例中40例(21.3%)でデブリが目視され、塞栓群とされた。CAS後に合併症が生じたのはすべて塞栓群で、脳卒中が10%(4例、うち死亡1例)、一過性脳虚血発作(TIA)が20.0%(8例)に発生した。塞栓群ではほかに、脳血管疾患以外の死亡が1例あり、30日後の死亡率は5%(2例)だった。非塞栓群では、これらのイベントは発生しなかった。

 患者背景を比較すると、塞栓群では非塞栓群に比べて、症候性頸動脈狭窄の比率(52.5% 対 27.7%、p=0.003)とLDL-C値(122mg/dL 対 102mg/dL、p=0.002)、CRP値(6.6mg/dL 対 2.6mg/dL、p=0.0003)が有意に高く、また、LDL-C>120mg/dL(57.5% 対 21.6%、p<0.0001)、CRP>4mg/dL(47.5% 対 16.9%、p<0.0001)の患者の割合も、有意に高かった。

 一方、超音波検査で頸動脈プラークの性状を調べたが、塞栓群と非塞栓群で違いは認められなかった。

 以上の検討からDe Carlo氏は、「CAS施行後の脳血管塞栓症には、LDL-C高値とCRP高値が関連していることが明らかになった。そのためCAS施行前にスタチンを投与することで、塞栓症を予防できる可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)