デンマークBispebjerg University HospitalのPeter Schnohr氏

 自転車による運動は、より速く走る方が、長時間走るよりも、死亡や冠動脈性心疾患死のリスク低減に効果があるようだ。例えば、1日30分未満、ゆっくりした速度で自転車に乗るよりも、速い速度で乗った方が、生存期間の期待値は男性で5.3年、女性で3.9年増加するという。デンマークBispebjerg University HospitalのPeter Schnohr氏らが、約2万人の成人を対象に行ったコホート試験であるCopenhagen City Heart Studyの結果の一部を分析し明らかにした。8月31日までパリで開催された欧州心臓病学会(ESC2011)で発表した。

 Copenhagen City Heart Studyは、最初の調査は1976〜1978年にかけて行われたが、今回の発表は1991〜1994年に行った第3回調査に基づく。試験では、1万6563人の年齢21〜90歳の男性のうち、心筋梗塞、脳卒中、癌などの病歴のない人で、普段自転車に乗っている5106人について調査を行った。被験者のうち、男性は2398人、女性は2708人で、主要評価目は死亡と冠動脈性心疾患による死亡だった。

 自転車の速さについては、被験者個人の基準で、遅い、平均的、速い、の3段階に分類した。また、その運動時間については、1日平均で30分未満、30分〜1時間、1時間超の3段階に分けた。追跡は、2009年または死亡まで行われ、平均追跡期間は18年だった。年齢、HDLコレステロール、その他に行っている運動、家庭の収入、BMI、喫煙の有無、収縮期血圧、アルコール摂取、糖尿病などについては、補正を行った。

 追跡期間中の死亡は1172人で、冠動脈性心疾患による死亡は146人だった。

 主要評価項目の発症率は、自転車に乗る時間が同じ群では、死亡、冠動脈性心疾患による死亡のいずれも、速度が速いとした群で最も低リスクだった。全般的に、長時間自転車に乗るよりも、1時間以内でも速く走った方が、同リスクが低下する傾向が見られた。

 具体的に総死亡率について見てみると、自転車に乗る時間が1日30分未満で、速さが遅いとした群を基準とすると、1日30分〜1時間、速い速度で自転車に乗る群が最も低リスクで、基準群に対するハザード比は0.44(95%信頼区間:0.28‐0.69)と、同じ時間、平均的速度で走る群のハザード比の0.70(同:0.51‐0.95)より0.26ポイントも低かった。

 次に同リスクが低かったのは、30分未満、速い速度で乗る群で、ハザード比は0.54(同:0.31‐0.94)だった。次いで、30分未満、平均的速度の群でハザード比は0.67(同:0.49‐0.92)だった。

 心血管疾患による死亡率が最低だったのも、30分〜1時間、速い速度の群で、基準群に対するハザード比は0.26(同:0.07‐0.96)、次いで1時間超、速い速度群が同0.27(同:0.08‐0.89)と低かった。平均的速度で走った群は、30分〜1時間でのハザード比は0.32(同:0.15‐0.67)、1時間超では0.49(同:0.24‐1.00)だった。
 
 喫煙の有無や収縮期血圧などで補正を行った後、自転車に30分未満乗る場合、遅い速度で乗る人に比べて、平均的速度で乗る人の期待生存期間は、男性で2.9年、女性で2.2年、それぞれ延長することが分かった。さらに、同じ30分未満を速い速度で乗った場合には、遅い場合に比べ、期待生存期間は男性で5.3年、女性で3.9年、それぞれ延長した。

 会場からは、自転車に1時間超乗った場合に、30分〜1時間乗ったよりも、死亡リスクなどが逆に増大した点に触れ、「運動を長くしすぎると逆に運動による効用が低くなるような“Jカーブ”と言えるのか」という質問があったが、Schnohr氏は「Jカーブということはこの試験からは言えない。ただ、運動時間を増やすことは、運動の激しさを増すよりも効果は少ないということだ」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)