京都女子大学家政学部の中村保幸氏

 1990年に実施された循環器疾患基礎調査をベースとするNIPPON DATA90から、日本人男女における飽和・不飽和脂肪酸の摂取と冠動脈疾患死亡との関連が明らかになった。女性では、飽和脂肪酸(SFA)の摂取量の増加に伴い冠動脈疾患死亡のリスクが1.37〜1.46倍に増加していた。8月27日からパリで開催されている欧州心臓学会(ESC2011)で、京都女子大学家政学部の中村保幸氏らが報告した。

 NIPPON DATA90は、1990年に厚生省(当時)が行った循環器疾患基礎調査をベースとする疫学研究で、日本全国からランダムに抽出した300地区における30歳以上の男女8384人が対象となっている。このデータと国民栄養調査のデータが結合され、様々な栄養の摂取状況と循環器疾患との関連について検討することが可能になった。今回が、その研究成果の最初の発表という。

 本検討で中村氏らは、ベースライン時に冠動脈疾患または脳卒中の既往がある者を除いた7819人(男性3254人、女性4565人)を対象に、イベントの発生を2005年まで15年間追跡した。食事内容の調査は3日間秤量記録法で行った。

 ベースライン時のSFAの摂取量について、摂取総カロリーに対する比率で5分位にしたところ、男性では下位分位から1.2〜4.7%、4.7〜5.5%、5.5〜6.2%、6.2〜7.0%、7.0〜13.0%となった。各分位における冠動脈疾患死亡は、下位分位から16人、8人、6人、7人、5人で、SFAの摂取と心血管死亡には関連は見られなかった(年齢調整後のp for trend=0.28)。

 これに対して女性のSFA摂取率(総カロリー比)は、下位分位から1.4〜5.2%、5.2〜6.1%、6.1〜6.8%、6.8〜7.7%、7.7〜13.8%で、冠動脈疾患死亡は8人、7人、3人、4人、8人となり、SFA摂取との間には有意な関連(年齢調整後のp for trend=0.02)が認められた。

 Cox's比例ハザードモデルを用いて、SFA摂取の増加(1分位高位になる)による冠動脈疾患死亡の相対リスクを求めたところ、女性では年齢調整後でハザード比(HR)が1.42(95%信頼区間:1.08-1.86、p=0.11)、年齢・高血圧・糖尿病・体重指数(BMI)・喫煙・飲酒で調整後は1.46(同:1.11-1.93、p=0.007)、さらに野菜類の摂取量を加えて調整したモデルでも1.37(同:1.11-1.93、p=0.007)と、どのモデルでも有意なリスクの増加を認めた。

 一方、不飽和脂肪酸(PUFA)については、男女ともに冠動脈疾患死亡との関連は見られなかった。

 男性でSFA摂取と冠動脈疾患死亡との関連が明らかではなかった点について、中村氏は「当時の国民栄養調査は家庭内の食事しか対象としていなかったので、一般に外食の頻度が高い男性で、SFAの摂取を十分に把握できなかった可能性がある」と話す。

 そのため女性だけでなく男性も、SFA摂取量の増加には注意する必要があるという。一般に摂取カロリーに占めるSFAの比率が7%を超えるのは好ましくないとされているが、日本人でも特に若い世代では、この値を超えつつあるとのことだ。

 なお、PUFAと冠動脈疾患との関連が認められなかった理由は、PUFAを多く含む魚類の摂食を通じて集団全体の摂取量が多かったためとみられる。そのため同氏は、「本検討ではPUFAとの関連は見られなかったが、魚介類の摂食は減らさないように」と釘を刺している。

(日経メディカル別冊編集)