米Michigan大学医学部のBertram Pitt氏

 ニューヨーク心臓協会NYHA)心機能分類IIで中程度の症状のある慢性収縮性心不全患者では、高齢や糖尿病などのハイリスク群においても、エプレレノンによる治療には、心血管死または心不全による入院リスクを3割以上低減する効果があることが示された。中でも、糖尿病患者については、同リスクが46%も低減した。米Michigan大学医学部のBertram Pitt氏らが、NYHA分類IIの慢性収縮性心不全患者、約2700人を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験(EMPHASIS-HF)のサブ解析の結果で、8月27日からパリで開催されている欧州心臓病学会(ESC2011)で発表された。

 Emphasis-HF試験全体の結果については、昨年の米国米国心臓協会・学術集会(AHA)で発表されており、心血管疾患死または心不全による入院リスクは、プラセボに比べ37%削減した。

 EMPHASIS-HFでは、55歳超のNYHA分類IIの慢性収縮性心不全で駆出分画率が35%以下の2737人を無作為に2群に分け、通常の治療薬に加え、エプレレノン(1日50mgまで)とプラセボをそれぞれ投与した。今回の分析に用いたデータの平均追跡期間は、25カ月だった。主要評価項目は、心血管疾患死または心不全による入院だった。

 ハイリスク群は、年齢が75歳超、糖尿病歴、糸球体濾過量が60mL/min/1.73m2未満、左室駆出分画率30%未満、収縮期血圧の中央値が123mmHg未満――の5群だった。

 その結果、75歳超の群では、主要評価項目に達したのはプラセボ群32.7%に対し、エプレレノン群23.6%と、同リスクは3分の2に減少した(ハザード比:0.66、95%信頼区間:0.49‐0.88、p<0.004)。糖尿病群でも、主要評価項目に達したのはプラセボ群35.2%に対し、エプレレノン群21.6%と大幅に低率だった(ハザード比:0.54、同:0.42‐0.70、p<0.0001)。

 同じく、糸球体濾過量が60mL/min/1.73m2未満では、プラセボ群34.5%に対し、エプレレノン群24.4%と4割近くリスクが低減した(ハザード比:0.62、同:0.49‐0.79、p=0.0001)。左室駆出分画率30%未満では、プラセボ群27.3%に対し、エプレレノン群19.3%(ハザード比:0.65、同:0.53‐0.78、p<0.0001)、収縮期血圧の中央値が123mmHg未満でも、プラセボ群29.4%に対し、エプレレノン群20.6%だった(ハザード比:0.63、同:0.51‐0.79、p<0.0001)。

 一方、安全性については、各ハイリスク群で、エプレレノン群はプラセボ群に比べ、K+>5.5mmoL/Lの高カリウム血症が有意に増大した(p<0.05)。だが、K+>6.0mmoL/Lの重度高カリウム血症や、高カリウム血症による投与中止や入院、腎機能悪化による入院について、いずれも両群で発生率に有意差は認められなかった。

 ディスカッサントとして登壇したポーランドClinical Military HospitalのPiotr Ponikowski氏は、心不全患者にとって、入院リスクを減らすことは非常に重要であるとし、同試験のエンドポイントの意義を評価した。その上で、エプレレノンなどのアルドステロン拮抗薬が、米国や欧州で適応患者の半数程度までしか服用していない現状を指摘した。

 同氏はまた、同試験結果によって心不全患者に対するエプレレノンの効果と安全性は非常に確かなものとなり、「臨床家として、エプレレノンの効果は本物で、一貫性があり、臨床的重要性を持つものだと判断した」と強調した。

(日経メディカル別冊編集)