オランダTilburg UniversityのN.L.M. Damen氏

 肯定的な感情の低下快感消失)は、経皮冠動脈インターベンションPCI)を受けた患者において、独立して全死因死亡リスクを1.6倍も上昇させることが示された。オランダTilburg UniversityのN.L.M. Damen氏らが、8月27日から31日までパリで開催されている欧州心臓学会(ESC2011)で発表した。

 不安や抑うつに代表される否定的な感情の状態は、冠動脈疾患(CAD)患者の心血管罹病率や死亡率の上昇に関係があることが知られている。 一方で、心血管罹病率や死亡率に対して、患者の肯定的な感情が臨床的にどのように影響するのかは、ほとんど明らかになっていない。 そこで演者らは、PCIを受けた患者において、快感消失(肯定的な感情の欠如)が長期の死亡率と関係があるかどうかを検討した。

 試験は、RESEARCH(ロッテルダム循環器病院におけるラパマイシン溶出ステント評価レジストリ)研究の一環として行われた。対象患者は、ロッテルダムのErasmus Medical Centerで登録されたPCI患者の1206人(男性71.5%、平均年齢62.0±11.1歳) 。

 すべの患者は、PCI後に病院不安およびうつ尺度(HADS)を用いて、快感消失の評価を受けた。肯定的感情については、HADSのスコア7以下(平均より1標準偏差=SD以下)と定義した。主要評価項目は全死因死亡とし、生存状態の把握には、患者の医療記録と市の市民登録(Municipal Civil Registries)を用いた。

 検討の結果、登録時に快感消失の状態にあった患者は、24% (1206人中286人)であった。PCI後7年時点(中央値7.0±1.6年)の全死因死亡は186件(15%)で、このうち65人が快感消失と評価された患者だった。

 追跡期間における快感消失患者の全死因死亡の発生率は23% (286人中65人)となり、一方の快感消失ではない患者では13.2%(920人中121人)に留まっていた。両群の累積全死因死亡率をみると、快感消失群が非快感消失群より有意に高く、ハザード比は1.66(95%信頼区間:1.19‐2.32、p=0.003)となった。

 これらの結果をもとに演者らは、「肯定的な感情を高め、さらに否定的な感情を弱めるような働きかけが、これからのCAD患者への心理的介入試験の目標となるであろう」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)