スイスUniversity of ZurichのThomas F. Luscher氏

 コレステロールエステル転送蛋白CETP)の阻害薬のdalcetrapibダルセトラピブ)の投与で、HDL値は約3割増大し、一方で血管内皮機能の低下や血圧上昇といった有害作用は認められないことが示された。これは、500人弱の冠動脈性心疾患または同程度のリスクを持つ人を対象に行ったプラセボ対照無作為化二重盲検試験(dal-VESSEL)の成果で、スイスUniversity of ZurichのThomas F. Luscher氏らが、8月27日から31日までパリで開催される欧州心臓病学会(ESC2011)で発表した。Dal-VESSEL試験は、dalcetrapibの治験第IIb相の位置づけでもある。

 Dalcetrapibは、直接CETPに働きかけ、HDLコレステロール(HDL-C)値を増大する作用がある。一方で、同クラスのtorcetrapibでは、過去の試験で、HDL-C値が増大するものの、血圧値も上昇するという試験結果が出ており、治験第III相も中止になったという経緯があった。

 Luscher氏らは、HDL-C値が50mg/dL未満で、冠動脈性心疾患または同等リスクの認められる476人を対象に試験を行った。研究グループは被験者を無作為に2群に分け、一方にはdalcetrapibを600mg/日、もう一方にはプラセボを投与した。主要評価項目は、試験開始時点から12週間後の血流依存性血管拡張反応(FMD)の変化と、4週間後の24時間携帯式血圧モニタリングの結果だった。副次的評価項目は、試験開始時点から36週間後のFMD変化や、12週、36週間後の24時間携帯式血圧モニタリングの結果、脂質値の変化などだった。

 結果は、試験開始後時点から12週、36週間後のFMDの変化には、両群で有意差はなかった。また、24時間携帯式血圧モニタリングの結果についても、試験開始時点と比較して、4週、12週、36週間後に有意な変化はいずれも認められなかった。

 Dalcetrapib群ではまた、投与36週間後にHDL-C値が31%増大したほか、アポリポ蛋白質A1(ApoA1)値も有意に増大した。一方で、LDLコレステロール(LDL-C)値やアポリポ蛋白質B100(ApoB100)値には、変化はなかった。

 ディスカッサントとして登壇した英国Edinburgh大学のKeith Fox氏は、この発表を受けて、非常に興味深い結果だと評価しながら、「被験者数が限られた小規模な試験なので、dalcetrapibの効果と有害作用の有無について断言はできない。より大規模な試験結果を待つことでより明確になるだろう」とコメントした。

(日経メディカル別冊編集)