カレスサッポロ北光記念クリニックの佐久間一郎氏

 心血管イベント抑制およびその原因となる動脈硬化進展抑制の観点から、欧米では血清LDLコレステロール(LDL-C)値は、“the lower, the better”であることが広く受け入れられている。今回、日本人の一次予防患者においても、80mg/dL未満を目標とした積極的なLDL-C低下療法の意義が実証された。8月27日から31日までパリで開催されている欧州心臓学会(ESC2011)で、カレスサッポロ北光記念クリニック(札幌市)の佐久間一郎氏らが発表した。

 佐久間氏らが発表したのは、北野病院(大阪市)の野原隆司氏が代表となって行われたJART(Justification for Atherosclerosis Regression Treatment)研究の中で、冠動脈疾患の既往がない一次予防の患者を対象とした解析結果。本研究は、日本人の動脈硬化の進展抑制に対する、より積極的なLDL-C低下療法の優位性を検証するために行われた。

 対象となったのは、LDL-C値が140mg/dL以上で、頸動脈内膜中膜複合体厚の最大値(max IMT)が1.1mm以上の成人。これをロスバスタチン5mg群からスタートする強化療法群、またはプラバスタチン10mgからスタートする従来療法群に無作為に割り付けた。

 強化療法群では、LDL-C管理目標値を80mg/dL未満とした積極的な治療を実施した。一方、従来療法群では現行の「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」にのっとり、対象者が持つリスクに応じた管理目標値(120〜160mg/dL未満)の達成を目指した。

 主要評価項目は、心血管イベントのサロゲートマーカーである頸動脈IMT(具体的にはmean IMT)の2年後の変化率とし、その評価はコアラボを設定して読影者1人が盲検下で行った。なお、1年後の解析で両群間での有効性の差が明らかとなったため、安全性評価委員会の勧告により本研究は2011年4月に中止された。今回はその中で、一次予防例に対象を絞って1年後までの解析結果として報告された。

 強化療法群(133人)および従来療法群(132人)の性別(男性:46.6% 対 46.2%)、年齢(63.3歳 対 62.4歳)、高血圧合併率(60.2% 対 63.6%)、糖尿病合併率(44.4% 対 44.7%)、血清脂質プロファイルなどに群間差は認められなかった。

 血清LDL-C値は強化療法群では163.7mg/dLから84.4mg/dLに−47.0%、従来療法群では166.8mg/dLから119.1mg/dLに−27.4%、それぞれ低下し、低下率は強化療法群で有意に大きかった。他にも強化療法群では従来療法群に比べて、LDL-C/HDLコレステロール(HDL-C)比、non HDLコレステロール値、トリグリセリド値が有意に改善した。

 主要評価項目であるmean IMTの変化率は、強化療法群ではベースライン時の0.903mmから1年後には0.915mmと+1.78±10.7%、従来療法群では0.853mmから0.891mmと+5.44±11.5%の増加で、従来療法群は強化療法群に対し有意に増加していた(p=0.011、2-sample t-test)。

 こうした結果から佐久間氏は、「日本人の動脈硬化性疾患の一次予防においても、より強力なスタチンを用いた“the lower, the better”の意義を明らかにすることができた」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)