ノルウェー・Ulleval大学病院予防医学科教授のTerje Pedersen氏

 欧州心臓学会(ESC2008)3日目の最新臨床試験報告「Hot Line 3」では、今年6月末にデータ集計・確認を終了したばかりの大規模臨床試験SEAS」スタディ(Simvastatin and Ezetimibe in Aortic Stenosis)の結果が、同試験の治験委員長でノルウェー・Ulleval大学病院予防医学科教授のTerje Pedersen氏(写真)から報告された。無症候性大動脈狭窄症に対してシンバスタチンコレステロール吸収阻害薬エジチミブを投与し、プラセボと比較した試験だが、主要複合エンドポイント大動脈狭窄症の進行については残念ながら実薬群の有意な抑制を立証できなかった。

 SEASスタディは、大動脈狭窄症に対するLDLコレステロール低減の効果をみた初の無作為化二重盲検プラセボ対照の大規模臨床試験で、北欧4国とドイツ、英国、アイルランドの173施設が参加した。2001年から患者登録を開始し、最後に登録した患者が4年間の追跡期間を終了した2008年3月に終了した。

 対象は45〜85歳で無症候性の大動脈狭窄症患者。スタチンによる他の治療を要する患者や冠動脈疾患を有する患者は除外した。SEASスタディでは、条件を満たした1873人をシンバスタチン+エジチミブ投与群(n=944)とプラセボ群(n=929)に無作為に割り付け、実薬群にはシンバスタチン40mg/日、エジチミブ10mg/日を投与した。実薬群の平均年齢は67.7歳、女性38.5%、プラセボ群は同じく67.4歳、38.8%だった。

 主要エンドポイント大動脈弁置換手術心血管死などを含む複合心血管イベント、2次エンドポイントは、大動脈弁関連イベントと、非致死性心筋梗塞(MI)心血管死などを含む虚血性心血管イベントの2つとした。

 結果は、実薬群の333人、プラセボ群の355人に1つ以上の主要エンドポイントに該当するイベントが発生した。実薬群とプラセボ群で有意な差は得られなかった(ハザード比0.96、p=0.591)。

 2次エンドポイントの虚血性心血管イベントについては、プラセボ群に対し、実薬群では22%有意に発生が少なかった(ハザード比0.78、p=0.024)。同じ2次エンドポイントの大動脈弁関連イベントでは有意な差はみられなかった(ハザード比0.97、p=0.732)。

 有害事象については波紋を投げかける結果となった。観察期間中の癌の発症は175人(同一部位の再発含む)だったが、実薬群で105人(11.1%)、プラセボ群では70人(7.5%)で、実薬群で有意に多かった(p=0.01)。

 癌死亡についても、実薬群で39人(4.1%)、プラセボ群で23人(2.5%)で実薬群が有意に多かった(ハザード比1.67、調整前p=0.05)。

 癌の発症部位については、皮膚癌(実薬群18人、プラセボ群8人)と前立腺癌(実薬群21人、プラセボ群13人)で実薬群が多い傾向にあったが、有意な差がみられた部位はなかった。

 SEASスタディの治験委員会は実薬群の発癌増加について、英オクスフォード大学に依頼し、シンバスタチン+エジチミブのプラセボ対照試験であるSHARP試験(慢性腎疾患を対象、n=9400)とIMPROVE-IT試験(急性冠疾患を対象、n=18000を目標に登録中)を含めて解析した。その結果、他の2試験合計の癌症例数はSEASスタディの4倍だが、実薬群で癌発症が多いというSEASスタディの結果を支持するものでなかった。

 Pedersen氏らは、SEASスタディにおける癌発症の増加は、「癌発症が少数であることによる“偶然の増加”(occurred as a result of chance)とし、「大動脈狭窄症に対するシンバスタチン+エジチミブ投与は、おおむね忍容性があり安全」とした。


【訂正】
 最後から2番目の段落で「SEASスタディは他の2試験と比較して癌発症が約4倍と多かった」とありましたが、正しくは、「他の2試験合計の癌症例数はSEASスタディの4倍だが、実薬群で癌発症が多いというSEASスタディの結果を支持するものでなかった」でした。訂正します。