近年では、開発途上国で薬剤の臨床試験が行われることが少なくないが、治験の参加者を募集する際に行われるインフォームドコンセントが本来の機能を果たしていない可能性が指摘された。治験体験者を対象にした調査の結果、半数の応募者が、よく分からないまま承諾の署名をしており、3分の2は「プラセボ」という用語を知らなかった。ブラジル・サンパウロ大学医学校循環器科のSilmara Meneguin氏らが、ミュンヘンで開催された欧州心臓病学会(ESC2008)のポスターセッションで9月3日に報告した。

 Meneguin氏らは、2002〜2006年に冠動脈疾患高血圧の治療薬の第2〜4層臨床試験に参加した体験者をデータベースから選び、電話で募集した。対象は20〜80歳の成人で、(1)外来による治験に参加、(2)無作為化試験に参加、(3)事前休薬期間を含め、プラセボ投与の経験がある、(4)インフォームドコンセントを受けた、などとし、当時の記憶がない、フォローアップを受けていないなどの場合は、排除した。

 その結果、途中脱落などを除き80人を対象とした。うち60人が男性で平均58.8±9.2歳。63.8%が無教育か小学校を中途退学しており、高卒は15%、大卒は10%に過ぎなかった。これを治療期間中のプラセボ投与群(47人)と非プラセボ投与群(33人)に分けて分析した。

 治験参加の動機は、自己利益(66.2%)と科学への関心(42.5%)を挙げた者が多く、医師の説明に納得した(15%)、かかりつけ医の勧め(10%)による参加は少数だった。

 衝撃的なのは、参加者の大半が臨床試験の全体像を理解せずに参加していると思われることだ。80人中40人、50%は「インフォームドコンセントを理解できたか」という問いに「No」と回答した。しかも、Noと答えた25人のうち24人は承諾の署名をしていた。

 また、全体の66%は「プラセボ」という語の意味を知らなかった。この認知度は学歴と有意な相関があった(p=0.022)。治療期間中、実際にプラセボを投与された人の36.2%は、薬剤として効果がないプラセボを投与される可能性があったことを理解しないまま参加していた。治験参加・拒否の意志決定に最も影響していたのは、治験参加時に立ち会った医師の意見だった。

 これらのことからMeneguin氏らは、ブラジルにおける治験参加者は、複雑な書類や長時間の説明を受けるインフォームドコンセントをよく理解できず、立ち会いの医師に影響されて参加を決めていること、その原因として教育水準の低さが関与していることを指摘した。