スウェーデン・カロリンスカ研究所ストックホルム南病院循環器科のPetter Ljungman氏

 不整脈ハイリスク患者では、大気汚染が悪化すると、2時間程度で不整脈発作が増えることが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所ストックホルム南病院循環器科のPetter Ljungman氏(写真)らが、9月3日のポスターセッションで報告した。不整脈と大気汚染の関連性を示した研究成果の発表は欧州では初めてという。

 Ljungman氏らは、埋め込み型除細動器(ICD)を装着した心室性不整脈の患者を対象に、大気汚染と不整脈発作の時間的関連を調べた。ICDからは不整脈発作の経時的な記録を取り出すことができるので、これと調査対象地区の大気汚染測定局の測定値を突き合わせた。

 大気汚染の指標としては、浮遊粒子状物質による大気汚染の国際的な指標であるPM10の濃度(1m3中における直径が10μm以下の浮遊粒子の重量)を用いた。

 2001〜2006年にかけて、ストックホルムとヨーテボリ(Gothenburg)市でICD埋め込み患者を募集し、73人から114回の心室性不整脈発作のデータを得た。

 調査地域におけるPM10の四分位範囲 (注)の増加は13.2μg/m3だった。2時間前にPM10がこれだけ増加した場合、不整脈発作のオッズ比は1.31(CI:1.00-1.72)となり、有意な関連性が得られた。しかし、24時間の平均値については、有意な関連性は得られなかった(オッズ比1.24、CI:0.87-1.76)。

 このPM10値と発作の関連性は、測定局と患者の居住地が近い方がより強い有意な関連性が得られ、PM10値が不整脈発作の予測因子として有用である可能性を示唆した。

 Ljungman氏は、「既存の研究では、汚染がひどくPM10値が高いほど、直線的に発作が増えることが示されており、(これ以下の汚染なら安全という)しきい値は存在しないと思われる」と指摘していた。

 世界銀行の調査による1999年の世界主要都市のPM10値をみると、東京が43μg/m3、名古屋が36μg/m3であるのに対して、ストックホルムは12μg/m3、ヨーテボリは13μg/m3と非常に低い水準となっている。日本の環境基準は1日平均で100μg/m3、世界保健機関(WHO)の指標は1日平均で50μg/m3となっているが、本研究の指摘をみると、さらに低い水準を目標に大気汚染対策を急ぐ必要がありそうだ。

注)四分位範囲(interquartile range):ばらつきを持つデータの第1四分位と第3四分位の値の差。極端な変化を排除した下限から上限までの変化を示す意味がある。