オランダ・アムステルダムOLVG病院循環器インターベンション科のAlexander J. J. Ijsselmuiden氏

 ジョイスティックを使って無線操縦できる磁気誘導式ガイドワイヤーを用いた冠動脈インターベンションが、安全性や処置成功率の点では一般のPCIと変わらず、透視時間とコストの大幅な削減を実現できる可能性が示された。オランダ・アムステルダムOLVG病院循環器インターベンション科のAlexander J. J. Ijsselmuiden氏らが8月31日、ミュンヘンで開催されている欧州心臓学会(ESC2008)で報告したもの。

 研究グループは、米Stereotaxis社(米ミズーリ州セントルイス)が開発したNiobeと呼ぶシステムを用いた。これは、2個の永久磁石を用いて一般的なMRIよりも1桁以上低い0.08T(テスラ)の強磁場をかけ、先端に磁石チップを備えた専用のカテーテルを誘導するというもの。X線透視と位置検出センサーなどを統合したシステムにより、医師は、カテーテルの位置を3次元的に確認しながら、ジョイスティックによって血管内を進めることができる。

 本研究では、インターベンションの成績と透視・造影時間、コストなどについて、磁気誘導型のPCIを通常のPCIとレトロスペクティブに比較した。

 対象は2007年1〜5月に磁気誘導型PCIを実施した連続375例のうち、遠位(1、2、5、6、11番以外)の複雑病変を有する47例とした。また、通常のPCIを施行し、年齢と病変領域を一致させた45例を対照群として比較を試みた。

 エンドポイントは、(1)手技の完遂(目的狭窄部位の遠位にワイヤーが到達)、(2)処置の成功(心脳血管イベントの発生なく再開通)、(3)処置に要した時間、(4)透視時間やコストなど、とした。

 両群で開始時点の病変部位や病変の状態、基礎疾患などについては、両群に有意な差は見られなかった。

 結果は、病変への到達を達成したのは磁気群で47例中45例(96%)、対照群で45例中44例(98%)。処置の成功は、磁気群で44例(93.6%)、対照群で44例(98%)と有意差がなく、どちらも安全に施行し得た。

 一方、処置に要した時間は、磁気群が29.9±17.6分、対照群が41.1±21.0分で磁気群が有意に短かった(p=0.007)。透視時間についても磁気群が7.5±7.3分、対照群が16.1±22.4分で磁気群の方が短時間だった(p=0.02)。造影剤の量も磁気群は122±82mLで、対照群の180±147mLの3分の2と少なかった(p=0.02)。

 処置時間の短縮、透視時間の短縮、造影剤低減について、多変量解析を実施したところ、いずれも磁気誘導型PCIの使用が独立の因子として関与していた。

 処置の平均コストは、磁気群が3323ユーロ(1ユーロ=160円として約53万円)、対照群が4723ユーロ(同、約76万円)で、磁気誘導によるPCIは通常のPCIに比べ、30%のコスト低減を実現できたことになる。

 これらの結果についてIjsselmuiden氏は、「透視時間や造影剤の使用が減り、被曝など患者の負荷を減らすことができる。結果としてコスト削減が可能な可能性がある」とした。ただし、「本検討はレトロスペクティブでランダム化しておらず、また、磁気誘導PCIを施行した医師はPCIの熟練者で、オペレーターバイアスがかかっている可能性があり、評価にはランダム化比較試験が必要」としていた。