北光記念クリニックの佐久間一郎氏

 冠動脈疾患の新たな指標としてLDL-C/HDL-C比が有用であることが示された。北海道で行われた症例対照研究および急性心筋梗塞の臨床試験による結果で、北光記念クリニックの佐久間一郎氏(写真)らが9月1日、ポスターセッションで発表した。

 日本の冠状動脈疾患用集中治療室(CCU)から、急性心筋梗塞(AMI)または急性冠症候群(ACS)で入院した患者のうち、約30%から40%でLDL-C値が100mg/dL以下だったとの報告がある。佐久間氏らは、動脈硬化性疾患予防治療ガイドライン(2007年版)で示されている患者カテゴリー別管理目標値のうち、冠動脈疾患の既往がある患者の二次予防に挙げられているLDL-C値が100mg/dL未満であることを重視、LDL-C値が100mg/dL以下であってもAMIやACSになる人が少なくない現状を明らかにするため症例対照研究に取り組んだ。

 また、これまでのメタ分析により、LDL-C/HDL-C比が2.0以上であればアテロームが進行し、2.0未満では退縮することが示されていることを踏まえ、LDL-C/HDL-C比が冠状動脈性心臓病(CHD)の第一次予防の新たなターゲット指標になり得るかどうか評価した。

 初めてAMI/ACSになり、北海道内の24病院へ搬送された955人の患者(男性690人、女性265人)を対象に、地域ベースのレトロスペクティブ症例対照研究を実施した。対照として、ある健康診断施設のデータベースから、年齢、性別、居住地が一致する1892人の被験者をランダムに選んだ。予測分析については、条件付きロジスティック回帰分析により、CHDの発病前因子と危険因子の関連性を計算した。

 調査の結果、AMI/ACSの患者の30.3%と対照者の18.9%が、LDL-C<100mg/dL(p<0.001)であった。これらの被験者で、平均LDL-C値はAMI/ACS群と対照群でそれぞれ78.8±12.7と79.7±16.0mg/dL(有意差なし)だったが、HDL-C値は46.5±17.5と65.2±18.3mg/dL(p<0.001)、LDL-C/HDL-C比は1.91±0.78と1.34±0.50(p<0.001)だった。

 また男性の場合、AMI/ACSに対する重要な予測判断材料は、低HDL-C(40mg/dL未満)(オッズ比;6.35、95%信頼区間;4.15-9.73、p<0.001)、糖尿病(以下同、5.87、4.13-8.35、p<0.001)、喫煙(2.33、1.62-3.35、p<0.001)、高血圧(2.20、1.55-3.15、p<0.001)、LDL-C/HDL-C比2.0以上(2.06、1.34-3.18、p<0.01)だった。一方、女性の場合は、低HDL-C(21.67、5.09-92.34、p<0.001)、糖尿病(20.14、9.03-44.95、p<0.001)、喫煙(5.00、2.11-11.89、p<0.001)、LDL-C/HDL-C比2.0以上(4.24、CI:1.61-11.17、p<0.01)だった。男女とも、高LDL-C値が有意な予測判断材料ではなかった点については、「おそらく低LDL-CのAMI/ACS患者が多かったため」(佐久間氏)と考察した。

 これらの結果から演者らは、「かなりの数のAMI/ACS患者が低LDL-Cで、対照被験者と比べてHDL-C値が低く、LDL-C/HDL-C比が高いことが分かった」と結論した。また、「LDL-C/HDL-C比はCHDの第一次予防に対する新たなターゲット指標になると考えられる」とし、「LDL-C/HDL-C比を下げるには、HDL-C値を集中的に上げ、かつ、LDL-C値を下げる治療の両方が、特にHDL-Cが低い場合に必要であろう」と考察した。