カナダ・マクマスター大のKoon K. Teo氏

 8月31日、TRANSCEND(Telmisartan Randomized AssessmeNT Study in ACE-INtolerant Subjects with Cardiovascular Disease)試験の結果がHOT LINE Iで発表された。演者であるカナダ・マクマスター大のKoon K. Teo氏は(写真)、心血管イベントの高リスク患者において、テルミサルタンが心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中からなる心血管複合エンドポイントを有意に抑制したと報告した。

 TRANSCENDは、ACE阻害薬に忍容性のない心血管イベントの高リスク患者を対象に、ARBであるテルミサルタン80mgの心血管イベント抑制効果をプラセボと比較検討した試験である。世界40カ国、733施設が参加した多施設共同の無作為化二重盲検試験で、合計で5926例が登録された。患者登録はONTARGET試験と同基準で行われ、スクリーニング期間期間にACE阻害薬に対する忍容性がなかった症例がTRANSCEND試験の対象となった。

 ARBの処方率の高いわが国とは異なり、欧米ではACE阻害薬は心血管イベント抑制を目的とした治療の選択肢として大きな位置を占めている。しかし、咳や血管浮腫などの副作用によってACE阻害薬を服用できない患者は約20%も存在することから、そうしたACE阻害薬に対する忍容性のない患者において、ARBが心血管イベントを抑制しうるかどうかは大きな関心事であった。

 主要評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、うっ血性心不全による入院からなる複合心血管イベントで、ここからうっ血性心不全による入院を除いたものを主要副次評価項目とした。このエンドポイントは、ACE阻害薬であるラミプリルの心血管イベント抑制効果を実証したHOPE試験の主要評価項目に相当する。

 追跡期間の中央値は56カ月間で、無作為割付された患者のうち99.7%の転帰が確認された。テルミサルタンの忍容性は良好で、試験薬の中止率はテルミサルタン群で低い傾向が認められた。

 主要評価項目である複合心血管イベントの発生率はテルミサルタン群15.7%、プラセボ群17.0%で、相対リスクは8%低下したものの群間に有意差は認められなかった。一方、主要副次評価項目の発生率はテルミサルタン群13.0%、プラセボ群14.8%で、相対リスクは13%有意に低下した。

 主要評価項目の構成要素のうち、心筋梗塞は21%、脳卒中は17%、テルミサルタン群で低下したが、有意差は認められなかった。一方、心血管死と心不全による入院の発生率は群間で同等であった。その他の評価項目には群間に違いは認められなかったが、左室肥大の新規発症、全心血管イベントによる入院のリスクはテルミサルタン群で有意に低下した。

 ベースラインにおける収縮期/拡張期血圧は、テルミサルタン群140.7/81.8mmHg、プラセボ群141.3/82.0mmHgで、試験期間中の平均血圧値はテルミサルタン群の方がプラセボ群に比べて4.0/2.2mmhg低くコントロールされた。しかし、血圧値で補正後においても、主要評価項目、副次評価項目の結果は変化しなかった。

 主要評価項目に有意差がつかなかった理由として、本試験の対象となった症例では最適な治療が行われており、イベントの発症リスクは低かったこと、プラセボ群では利尿薬やβ遮断薬の併用率が高く、それがプラセボ群における心不全の発生を抑制したことなどが考えられる。

 以上の検討から、心血管イベントの高リスク患者において、既存の最適な治療にテルミサルタンを上乗せすることで、心血管イベントの発生リスクを抑制しうること、なかでも心筋梗塞と脳卒中の抑制効果は顕著であること、ACE阻害薬に忍容性のない症例が対象であってもテルミサルタンの忍容性は良好であることが示された。

(山岸倫也=メディカルライター)