名古屋大学大学院の松下邦洋氏

 アディポネクチンHDLコレステロールの代謝において、インスリン抵抗性や肥満よりも重要な働きをしている可能性が示された。名古屋大学大学院医学系研究科の松下邦洋氏が9月6日の一般口演で発表、「アディポネクチンはHDLコレステロール値を上げるための臨床上のターゲットになりえる」と指摘した。

 体内の脂肪細胞で作られるアディポネクチンは、脂質代謝にかかわって、動脈硬化や糖尿病の発症を抑えると考えられてきた。しかし脂質のひとつであるHDLコレステロール(HDL-C)代謝において、どの程度関与しているのかは明らかではなかった。

 研究グループは、愛知県内に勤務する健康な3243人を対象に、アディポネクチン、インスリン抵抗性(HOMA-IR)、肥満度(BMI)の3指標について、HDL-Cとの関連性の強さを比較した。HDL-Cは男性で40mg/dL 未満、女性では50mg/dL未満を低値とした。

 HDL-C低値に対するオッズ比をロジスティック回帰分析で求めた結果、男女ともアディポネクチンの減少はインスリン抵抗性や肥満度の増加に比べ、1.3〜1.5倍も関連性が強いことがわかった。

 松下氏はその理由として、アディポネクチンが、HDL新生を促進するペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR α)を刺激するか、あるいは、HDL-Cの増加につながるリポタンパク質リパーゼを活性化するためではないかと推察した。

 また、心血管疾患予防のターゲットとして、HDL-C上昇よりLDL-C減少を重視している現状について同氏は、「LDL-Cが1%低下しても心血管疾患の発症は1%しか削減できないが、HDL-Cが1%上がれば発症は3%減る。心血管疾患の予防にはHDL-Cを上げるほうが重要だ」と述べた。